外痔核に対する外用薬により薬物性肝障害を惹起した1例

症例は63歳男性.2006年2月に直腸癌と診断され同年3月に手術目的で当院外科に入院したが,肝機能異常を認めたため手術を延期し退院した.退院時には肝機能異常は改善していたものの,その後再度肝機能異常が増悪したため精査目的にて当科紹介入院となった.各種ウイルスマーカーや自己抗体は陰性であり,アルコール摂取や自然食品も含めた内服薬服用はなかった.しかし肝機能異常発現前の2006年2月から,外痔核に対してボラザG坐薬(トリベノシドとリドカインの合剤)とネリプロクト軟膏(吉草酸ジフルコルトロンとリドカインの合剤)を処方され使用していることが判明した.両剤の使用・中止と肝機能異常の出現・消退との時間的な...

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Published in肝臓 Vol. 49; no. 8; pp. 362 - 367
Main Authors 森澤, 嘉彦, 田中, 篤, 三浦, 亮, 深水, 雅子, 後藤, 英晃, 根來, 真一郎, 三神, 昌樹, 塙, 直子, 相磯, 光彦, 福里, 利夫, 滝川, 一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2008
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Summary:症例は63歳男性.2006年2月に直腸癌と診断され同年3月に手術目的で当院外科に入院したが,肝機能異常を認めたため手術を延期し退院した.退院時には肝機能異常は改善していたものの,その後再度肝機能異常が増悪したため精査目的にて当科紹介入院となった.各種ウイルスマーカーや自己抗体は陰性であり,アルコール摂取や自然食品も含めた内服薬服用はなかった.しかし肝機能異常発現前の2006年2月から,外痔核に対してボラザG坐薬(トリベノシドとリドカインの合剤)とネリプロクト軟膏(吉草酸ジフルコルトロンとリドカインの合剤)を処方され使用していることが判明した.両剤の使用・中止と肝機能異常の出現・消退との時間的な経過が一致し,偶然の再投与により肝障害が再燃していることより,本例の肝障害は外用薬による薬物性肝障害と診断した.外用薬による薬物性肝障害の報告例は極めて少なく,示唆に富む症例と考え報告する.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.49.362