過去10年間における膿胸72例の臨床統計的観察

鹿児島大学医学部小児科学教室において, 昭和49年4月より昭和59年3月までに経験した膿胸症例72例について臨床統計的観察を行った.年齢別では, 6ヵ月未満が43例 (59.7%) と大半を占め, 患側では右側が44例 (61.1%) であった. 胸腔穿刺液培養陽性例は53例 (73.6%) であり, 47例 (65.3%) がStaphylococcus aureus (以下S.aureusと略す) によるものであった.Saunusの薬剤感受性をみると, ABPC, EM, TCには耐性の比率が高く, GM, DKB, TOB等のアミノグリコシド系薬剤への耐性も出現していた. 死亡例は, 7...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 60; no. 2; pp. 176 - 182
Main Authors 宮田, 晃一郎, 吉永, 正夫, 鉾之原, 昌, 寺脇, 保, 野村, 裕一, 小野, 星吾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 01.02.1986
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi1970.60.176

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Summary:鹿児島大学医学部小児科学教室において, 昭和49年4月より昭和59年3月までに経験した膿胸症例72例について臨床統計的観察を行った.年齢別では, 6ヵ月未満が43例 (59.7%) と大半を占め, 患側では右側が44例 (61.1%) であった. 胸腔穿刺液培養陽性例は53例 (73.6%) であり, 47例 (65.3%) がStaphylococcus aureus (以下S.aureusと略す) によるものであった.Saunusの薬剤感受性をみると, ABPC, EM, TCには耐性の比率が高く, GM, DKB, TOB等のアミノグリコシド系薬剤への耐性も出現していた. 死亡例は, 72例中9例 (12.5%) であった. 死亡例についてrisk factorを検討したが, 1) 生後4カ月以内の発症 (39例中死亡例8例, p=0.026), 2) 両側罹患例 (5例中死亡例3例, p=0.012), 3) 入院時白血球数10,000/mm3以下 (12例中死亡例5例, p=0.0049), 4) 合併症として麻痺性イレウス, DICを併発したもの (9例中死亡例6例, p=0.0027) の4項目がriskfactorとして重要と思われた. これらのrisk factorのうち2項目以上陽性例は, 9例中7例が死亡例であり (p=0.000059), 1項目以上陽性例では, 45例中9例が死亡例であった. (p=0.010). 以上のことより, risk factorが一項目でも陽性であれば, 適切な抗生剤療法と, 時期を逸しない持続吸引療法は当然の事として, 全身的な補助を強力に行う必要があると思われる.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.60.176