小児急性気道感染時の鼻前庭における病原細菌

急性気道炎の患児及び年齢のほぼ一致した健康児, 各109名について咽頭と鼻前庭の細菌学的検査を行った.気道病原菌として一般に認識されているHaemophilus influenzae, Streptococcus pneumoniae, β-hemolytic Streptococcus, Staphylococcus aureus, Moraxella catarrhalisのいずれかが分離された者は患児グループで91%であったが健康児グループでも77%という高い保菌率を示した.際だった所見は患児の鼻前庭から高率にS.pneumoniaeを分離したことである.即ちS.pneumoniaeの分...

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Published in感染症学雑誌 Vol. 75; no. 2; pp. 124 - 132
Main Authors 浜端, 宏英, 仲宗根, 昇, 垣花, シゲ, 比嘉, 直美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 20.02.2001
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ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi1970.75.124

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Summary:急性気道炎の患児及び年齢のほぼ一致した健康児, 各109名について咽頭と鼻前庭の細菌学的検査を行った.気道病原菌として一般に認識されているHaemophilus influenzae, Streptococcus pneumoniae, β-hemolytic Streptococcus, Staphylococcus aureus, Moraxella catarrhalisのいずれかが分離された者は患児グループで91%であったが健康児グループでも77%という高い保菌率を示した.際だった所見は患児の鼻前庭から高率にS.pneumoniaeを分離したことである.即ちS.pneumoniaeの分離率は健康児咽頭で9%, 鼻前庭で8%であったが, 患児ではそれぞれ7%と28%であった.S.pneumoniae以外のα-hemolytic Streptococcusの分離率は患児・健康児ともに鼻前庭では6%に留まった.H.influenzaeは健康児の咽頭保菌率は34%で, それが気道炎時には41%になったが健康保菌者との有意差はなかった.H.influenzaeは健康者の鼻前庭からは全く分離されなかったが, 患児の鼻前庭からは25%に分離されたことから, 鼻前庭からのH.influenzae分離は急性気道感染症 (ARI) に関する貴重な情報であると考えられた.S.aureusは鼻前庭よりも咽頭からの分離率が高く, また患児よりも健康児の方が高い分離率であったことからブドウ球菌性ARIという診断には十分な考慮が必要である.以上の結果からS.pneumoniaeとH.influenzaeをARIの起炎菌として判定するためには鼻前庭の培養検査が極めて重要であると考えられる.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.75.124