外傷性上行大動脈損傷の1例

症例は25歳の男性.アイスピック状の凶器で左側胸部を刺され,当院に搬送された.CTでは左冠状動脈分枝の約1 cm末梢の上行大動脈の後壁内に造影剤の貯留像を認めた.心タンポナーデによる急性循環不全解除の目的で,緊急避難的に剣状突起下開窓心嚢ドレナージを行った.ドレナージ後,持続的な出血を認めなかったため,緊急での上行大動脈損傷部の修復術は行わなかった.経過観察中,損傷部に仮性瘤の形成を認めたため,受傷後27日目に損傷部の修復術を行い,術後経過は合併症なく良好であった.穿通性の大動脈損傷では微細な損傷であっても急速に増大する仮性瘤を形成することがあり,常に動脈瘤形成に留意する必要がある....

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 39; no. 1; pp. 14 - 16
Main Authors 谷川, 昇, 澤田, 敏, 徳田, 貴則, 生田, 剛士, 藤井, 弘史, 大迫, 茂登彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 2010
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.39.14

Cover

More Information
Summary:症例は25歳の男性.アイスピック状の凶器で左側胸部を刺され,当院に搬送された.CTでは左冠状動脈分枝の約1 cm末梢の上行大動脈の後壁内に造影剤の貯留像を認めた.心タンポナーデによる急性循環不全解除の目的で,緊急避難的に剣状突起下開窓心嚢ドレナージを行った.ドレナージ後,持続的な出血を認めなかったため,緊急での上行大動脈損傷部の修復術は行わなかった.経過観察中,損傷部に仮性瘤の形成を認めたため,受傷後27日目に損傷部の修復術を行い,術後経過は合併症なく良好であった.穿通性の大動脈損傷では微細な損傷であっても急速に増大する仮性瘤を形成することがあり,常に動脈瘤形成に留意する必要がある.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.39.14