高齢男性に発症し多彩な免疫異常を認めた自己免疫性肝炎の1例

症例は72歳男性.肝機能障害を指摘され当科紹介受診.腹部エコー検査にて少量の腹水と慢性肝炎の所見を認め,IgG 4,984 mg/dl,抗核抗体40,960倍であり自己免疫性肝炎(AIH)を疑い精査加療のため入院となった.多彩な免疫異常を伴った重症のAIHと診断し,ステロイドパルス療法を開始した.その後,プレドニゾロン(PSL)50 mgに変更し,肝機能,プロトロンビン時間の改善がみられPSLを漸減した.経過中に血小板数が著明に減少したが,PAIgGが高値であること,骨髄中の巨核球数の減少がないことから免疫性の血小板減少症と診断した.そのため,シクロスポリン50 mgの追加投与が必要であった....

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Published in肝臓 Vol. 51; no. 1; pp. 13 - 20
Main Authors 有永, 照子, 宮島, 一郎, 久原, 孝一郎, 鳥村, 拓司, 井出, 達也, 緒方, 啓, 佐田, 通夫, 神代, 龍吉, 垣内, 誠也, 國武, 泰史, 桑原, 礼一郎, 古賀, 郁利子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本肝臓学会 2010
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ISSN0451-4203
1881-3593
DOI10.2957/kanzo.51.13

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Summary:症例は72歳男性.肝機能障害を指摘され当科紹介受診.腹部エコー検査にて少量の腹水と慢性肝炎の所見を認め,IgG 4,984 mg/dl,抗核抗体40,960倍であり自己免疫性肝炎(AIH)を疑い精査加療のため入院となった.多彩な免疫異常を伴った重症のAIHと診断し,ステロイドパルス療法を開始した.その後,プレドニゾロン(PSL)50 mgに変更し,肝機能,プロトロンビン時間の改善がみられPSLを漸減した.経過中に血小板数が著明に減少したが,PAIgGが高値であること,骨髄中の巨核球数の減少がないことから免疫性の血小板減少症と診断した.そのため,シクロスポリン50 mgの追加投与が必要であった.血小板数は改善し,肝機能も正常化し,PSLを22.5 mgまで減量したが,肺真菌症を併発し死亡した.多彩な免疫異常を認め,治療中に感染症を合併し不幸な転帰をたどった高齢男性に発症したAIHの1例を経験したので報告した.
ISSN:0451-4203
1881-3593
DOI:10.2957/kanzo.51.13