右鼠径ヘルニア偽還納の1例

症例は59歳,男性.以前より右鼠径ヘルニアを指摘されており,たびたび右鼠径部が膨隆していたが,その都度自己整復していた.平成20年10月下旬右鼠径部に膨隆が出現したため自分で徒手整復した.その後腹痛が出現し,徐々に増強したため翌日近医を受診し,イレウスと診断され当院紹介受診となった. 受診時,右鼠径部に膨隆は見られず,下腹部に圧痛・自発痛を認めたが腹膜刺激症状は見られなかった.腹部X線写真では拡張した小腸を認め,腹部CTでは右下腹部に拡張した腸管を認めたが,右鼠径部腹壁外への脱出臓器は見られなかった.保存的治療を試みたが,翌日の腹部X線写真でイレウス像の増悪が見られたため,内ヘルニア,索状物に...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 72; no. 2; pp. 516 - 518
Main Authors 工藤, 淳三, 呉原, 裕樹, 杉浦, 正彦, 溝口, 公士, 辻, 秀樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2011
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.72.516

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Summary:症例は59歳,男性.以前より右鼠径ヘルニアを指摘されており,たびたび右鼠径部が膨隆していたが,その都度自己整復していた.平成20年10月下旬右鼠径部に膨隆が出現したため自分で徒手整復した.その後腹痛が出現し,徐々に増強したため翌日近医を受診し,イレウスと診断され当院紹介受診となった. 受診時,右鼠径部に膨隆は見られず,下腹部に圧痛・自発痛を認めたが腹膜刺激症状は見られなかった.腹部X線写真では拡張した小腸を認め,腹部CTでは右下腹部に拡張した腸管を認めたが,右鼠径部腹壁外への脱出臓器は見られなかった.保存的治療を試みたが,翌日の腹部X線写真でイレウス像の増悪が見られたため,内ヘルニア,索状物による絞扼などを疑い緊急開腹術を行った.腹腔内を検索したところ,右鼠径部で腹腔側へ陥入したヘルニア嚢に小腸が嵌頓していた.本症例は偽還納と呼ばれる稀な嵌頓形態である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.72.516