一過性症候が先行し,後に持続性となった純粋失構音の1例

症例は一過性の発語障害を繰り返したあと,最終的にその発語障害が持続性となった,61歳,左利きの男性。発語障害は,内言語障害を伴わずに口頭言語表出のみの障害であること,しかも構音筋の麻痺を伴わないことから,いわゆる純粋失構音に相当する症候と考えられた。 MRIでは,左前頭葉から頭頂葉にかけての皮質下白質,尾状核および島深部白質に, Gadolinium-DTPA で増強効果を示す病変が認められた。本症例の発話における特徴は,従来の純粋失構音とは若干異なり,構音運動の巧緻性の障害という印象が強いことであり,左大脳皮質下白質の障害により,左右大脳半球を連絡する文運線維,および左皮質延髄路が同時に障害...

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Published in失語症研究 Vol. 13; no. 3; pp. 215 - 223
Main Authors 中村, 健正, 杉本, 啓子, 種田, 二郎, 長谷川, 泰弘, 山口, 武典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本失語症学会 (現 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会) 1993
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ISSN0285-9513
1880-6716
DOI10.2496/apr.13.215

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Summary:症例は一過性の発語障害を繰り返したあと,最終的にその発語障害が持続性となった,61歳,左利きの男性。発語障害は,内言語障害を伴わずに口頭言語表出のみの障害であること,しかも構音筋の麻痺を伴わないことから,いわゆる純粋失構音に相当する症候と考えられた。 MRIでは,左前頭葉から頭頂葉にかけての皮質下白質,尾状核および島深部白質に, Gadolinium-DTPA で増強効果を示す病変が認められた。本症例の発話における特徴は,従来の純粋失構音とは若干異なり,構音運動の巧緻性の障害という印象が強いことであり,左大脳皮質下白質の障害により,左右大脳半球を連絡する文運線維,および左皮質延髄路が同時に障害されたことが原因で発現したものと考えられた。純粋失構音の責任病巣を考える上で交連線維の重要性を示唆する1例である。
ISSN:0285-9513
1880-6716
DOI:10.2496/apr.13.215