特徴的なCT所見を呈した腸回転異常を伴う傍十二指腸ヘルニアの1例

症例は38歳,男性.前日夜に下腹部の激痛が出現し,翌日未明に当院を受診した.造影CT検査所見で腸回転異常症を伴う右傍十二指腸ヘルニアと診断し,同日緊急手術を行った.手術所見ではTreitz靱帯を認めず,右側結腸間膜の固定が不完全で,腸回転異常症を伴っていた.また,ヘルニア嚢の内外に虚血腸管が存在しており,虚血腸管をすべて切除すると短腸症候群に陥ることが危惧されたため,虚血腸管は切除せずに閉腹し,慎重な経過観察を行って,後日,腸の破綻が疑われた時点で再開腹して破綻小腸を切除する二期的手術の方針を選択した.術後循環動態は安定し,経口摂取開始後も順調に経過したため,再手術を行うことなく退院した.腸回...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 76; no. 9; pp. 2191 - 2195
Main Authors 山下, 浩正, 藤田, 建, 高野, 学, 馬場, 泰輔, 小川, 敦司, 井垣, 啓
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2015
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.76.2191

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Summary:症例は38歳,男性.前日夜に下腹部の激痛が出現し,翌日未明に当院を受診した.造影CT検査所見で腸回転異常症を伴う右傍十二指腸ヘルニアと診断し,同日緊急手術を行った.手術所見ではTreitz靱帯を認めず,右側結腸間膜の固定が不完全で,腸回転異常症を伴っていた.また,ヘルニア嚢の内外に虚血腸管が存在しており,虚血腸管をすべて切除すると短腸症候群に陥ることが危惧されたため,虚血腸管は切除せずに閉腹し,慎重な経過観察を行って,後日,腸の破綻が疑われた時点で再開腹して破綻小腸を切除する二期的手術の方針を選択した.術後循環動態は安定し,経口摂取開始後も順調に経過したため,再手術を行うことなく退院した.腸回転異常症を伴う右傍十二指腸ヘルニアでは,腸回転異常症に起因する解剖の特殊性から,ヘルニア嚢の内にも外にも虚血腸管と正常腸管が併存しうる.造影CT検査所見でも特徴的な所見を呈し,診断に有用である.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.76.2191