2系統の一期的門脈大循環シャント塞栓術が奏功した難治性肝性脳症の1例
2系統の門脈大循環シャントを一期的に閉塞することで症状が改善した肝性脳症の1例を報告する.症例は56歳の男性.膵頭部癌による閉塞性黄疸で初診し,その際肝硬変と,脾腎,腸間膜下大静脈,腸間膜右腎シャントが認められた.Child-Pugh 10点 C gradeと肝予備能は低く,膵癌の根治手術を断念した.その後徐々に肝性脳症が出現し,意識障害のため入院を反復して内科治療抵抗性と判断した.3系統のシャントのうち,脾腎,腸間膜下大静脈シャントに対して一期的にバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)を施行し,その後は脳症顕性化を認めず,術前Child-Pugh 12点から術後7-8点へ改善した.本例で...
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Published in | 肝臓 Vol. 60; no. 8; pp. 302 - 309 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本肝臓学会
01.08.2019
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Summary: | 2系統の門脈大循環シャントを一期的に閉塞することで症状が改善した肝性脳症の1例を報告する.症例は56歳の男性.膵頭部癌による閉塞性黄疸で初診し,その際肝硬変と,脾腎,腸間膜下大静脈,腸間膜右腎シャントが認められた.Child-Pugh 10点 C gradeと肝予備能は低く,膵癌の根治手術を断念した.その後徐々に肝性脳症が出現し,意識障害のため入院を反復して内科治療抵抗性と判断した.3系統のシャントのうち,脾腎,腸間膜下大静脈シャントに対して一期的にバルーン下逆行性経静脈的塞栓術(BRTO)を施行し,その後は脳症顕性化を認めず,術前Child-Pugh 12点から術後7-8点へ改善した.本例では肝性脳症が本人の尊厳と家族の生活を著しく損ねており,また膵癌の病勢も比較的落ち着いていたため,治療適応とした.内科治療に抵抗性の肝性脳症に対して,BRTOが有効な治療法の一つになると考えられた. |
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ISSN: | 0451-4203 1881-3593 |
DOI: | 10.2957/kanzo.60.302 |