腹腔鏡下に切除した後腹膜Simple cystの1例
患者は39歳の女性。37歳時に子宮頸癌で広汎子宮全摘および膣内照射を施行されている。2010年2月右下腹部痛と熱発で近医を受診したところ,急性虫垂炎と診断され当科に紹介された。右下腹部に強い圧痛と腹膜刺激症状を認めた。腹部CTで右腸骨窩に7×4cmの嚢胞を認めた。白血球17,700/mm3,CRP 7.1mg/dLと炎症反応亢進を認めた。以上より後腹膜膿瘍を伴う急性虫垂炎と診断し手術を行った。腹腔鏡下に観察すると,右腸骨窩に被覆腹膜に軽度の炎症を伴う鶏卵大の腫瘤を認め,腹腔鏡下にこれを摘出した。腫瘤は単房性の嚢胞で,内容は膿汁様であった。虫垂は正常であり処置しなかった。病理組織検査ではSimp...
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Published in | 日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 32; no. 6; pp. 1075 - 1078 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本腹部救急医学会
2012
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Subjects | |
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Summary: | 患者は39歳の女性。37歳時に子宮頸癌で広汎子宮全摘および膣内照射を施行されている。2010年2月右下腹部痛と熱発で近医を受診したところ,急性虫垂炎と診断され当科に紹介された。右下腹部に強い圧痛と腹膜刺激症状を認めた。腹部CTで右腸骨窩に7×4cmの嚢胞を認めた。白血球17,700/mm3,CRP 7.1mg/dLと炎症反応亢進を認めた。以上より後腹膜膿瘍を伴う急性虫垂炎と診断し手術を行った。腹腔鏡下に観察すると,右腸骨窩に被覆腹膜に軽度の炎症を伴う鶏卵大の腫瘤を認め,腹腔鏡下にこれを摘出した。腫瘤は単房性の嚢胞で,内容は膿汁様であった。虫垂は正常であり処置しなかった。病理組織検査ではSimple cystで,内容液の細胞診でも悪性細胞はなかった。細菌培養検査でStreptococcus agaractiaeを認めた。後腹膜に発生する腫瘍は人体に発生する腫瘍の0.2%にしかすぎない。このうち嚢胞性疾患に対しては摘出が望ましいとされているが,自覚症状がなければ経過観察するという報告もある。本例では嚢胞に感染を生じ,腹痛の原因となっていたため腹腔鏡下に摘出を行った。 |
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ISSN: | 1340-2242 1882-4781 |
DOI: | 10.11231/jaem.32.1075 |