肝内胆管癌との術前鑑別が困難であった内臓幼虫移行症の1例

症例は58歳,男性.生活歴,既往歴に特記事項はない.他科で施行された血液検査で肝胆道系酵素の異常値を指摘され当科を受診した.白血球数上昇や好酸球増多は認められなかった.腹部超音波検査で肝S2に13mm大の低エコー腫瘤が認められた.同部位は単純CTで低吸収域となり,造影の動脈相から平衡相にかけて不均一な造影効果を呈した.肝内胆管癌を第一に疑い,肝外側区域切除術を施行した.病理組織診断では同病変は類上皮肉芽腫であり,その内部に寄生虫虫体と考えられる構造が認められ,内臓幼虫移行症と診断された.本症はしばしば他の肝腫瘤性疾患との鑑別が困難であり,白血球数上昇や好酸球増多,および肝外病変の存在が本症を疑...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 74; no. 6; pp. 1655 - 1660
Main Authors 森永, 正二郎, 鈴木, 慶一, 浅沼, 史樹, 山田, 好則, 大作, 昌義, 四倉, 正也, 金田, 宗久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2013
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.74.1655

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Summary:症例は58歳,男性.生活歴,既往歴に特記事項はない.他科で施行された血液検査で肝胆道系酵素の異常値を指摘され当科を受診した.白血球数上昇や好酸球増多は認められなかった.腹部超音波検査で肝S2に13mm大の低エコー腫瘤が認められた.同部位は単純CTで低吸収域となり,造影の動脈相から平衡相にかけて不均一な造影効果を呈した.肝内胆管癌を第一に疑い,肝外側区域切除術を施行した.病理組織診断では同病変は類上皮肉芽腫であり,その内部に寄生虫虫体と考えられる構造が認められ,内臓幼虫移行症と診断された.本症はしばしば他の肝腫瘤性疾患との鑑別が困難であり,白血球数上昇や好酸球増多,および肝外病変の存在が本症を疑う手がかりとなることが多い.自験例は術前検査では寄生虫感染を積極的に疑うことが困難であったが,極めて稀であるとされる虫体成分が切除病変から検出されたため,内臓幼虫移行症と診断することが可能であった.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.74.1655