冠攣縮性狭心症により房室ブロックから心停止となった1例

症例は58歳の男性。職場で倒れているところを発見され救急要請となった。救急隊が現場到着時,Japan coma scale(JCS)100であったが,その後JCS300となり心停止に陥ったため,直ちに蘇生処置が施行され当院へ搬送となった。当院来院時,自己心拍は再開していたが,救急隊によるモニター心電図にて完全房室ブロックからの心静止が確認された。冠動脈造影検査では器質的病変は認めず,心エコー検査やその他の全身検索にて原因となる異常所見は認められなかった。幸い心停止時間は短く,搬送後の意識レベルはGlasgow coma scale(GCS)E3V3M5まで回復し,一時的にペースメーカーを留置し...

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Published in日本救急医学会雑誌 Vol. 24; no. 7; pp. 413 - 419
Main Authors 鷹取, 治, 安間, 圭一, 織田, 裕之, 佐藤, 康次, 金森, 尚美, 大谷, 啓輔, 久保田, 幸次
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本救急医学会 2013
Subjects
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ISSN0915-924X
1883-3772
DOI10.3893/jjaam.24.413

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Summary:症例は58歳の男性。職場で倒れているところを発見され救急要請となった。救急隊が現場到着時,Japan coma scale(JCS)100であったが,その後JCS300となり心停止に陥ったため,直ちに蘇生処置が施行され当院へ搬送となった。当院来院時,自己心拍は再開していたが,救急隊によるモニター心電図にて完全房室ブロックからの心静止が確認された。冠動脈造影検査では器質的病変は認めず,心エコー検査やその他の全身検索にて原因となる異常所見は認められなかった。幸い心停止時間は短く,搬送後の意識レベルはGlasgow coma scale(GCS)E3V3M5まで回復し,一時的にペースメーカーを留置し経過観察入院とした。その後,致死性不整脈の再燃なく経過した。意識レベルの回復後に聴取した病歴より,発症当日の朝から胸部不快感を自覚していたことが判明した。冠攣縮性狭心症を疑い,第3病日に冠攣縮誘発試験を施行したところ右冠動脈近位部での完全閉塞が誘発され,123I-BMIPP心筋シンチグラフィにて下壁の集積低下を認めたため,冠攣縮にて誘発された完全房室ブロックからの心停止と診断した。薬物療法として,すでに服用していたアムロジピンをベニジピンへ変更し,硝酸薬とニコランジルも追加投与した。また恒久的ペースメーカーの留置を行い,第12病日に独歩退院した。冠攣縮性狭心症の予後は通常良好とされるが,稀に心室細動などの致死性不整脈を合併することもある。今回はその中でも比較的稀な完全房室ブロックからの心停止症例であった。心原性心停止が疑われた患者の蘇生後,その原因検索として器質的心・冠動脈疾患が認められなかった場合,冠攣縮性狭心症を疑い評価することが重要であるが,その評価方法や時期については一定の見解はなく,今後の検討が必要である。また本症例では完全房室ブロックからの心停止再発は許容されないことからペースメーカー植込みを行った。
ISSN:0915-924X
1883-3772
DOI:10.3893/jjaam.24.413