伝染性単核球症による遊走脾の腫大に捻転を伴った脾破裂の1例

症例は20歳,女性.咳嗽と発熱を主訴に近医を受診し,腹部造影CTにて巨大脾腫を認めた.同日夜に腹痛とともにショック状態となり,腹部造影CTで腹腔内全域に血液貯留を認め,脾臓破裂による出血性ショックと診断した.緊急開腹手術を行ったところ,脾臓は後腹膜へは固定されておらず,脾動静脈が捻転していた.脾臓の被膜から持続する出血を認めたため摘出を行った.術後経過は順調で術後18日目に自宅退院となった.後の検索により伝染性単核球症(infectious mononucleosis:IM)による脾腫であったことが判明し,遊走脾,脾捻転と共に稀な病態であった.脾捻転による静脈灌流が低下し脾動脈のみ流入すること...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 81; no. 4; pp. 761 - 766
Main Authors 川崎, 亮輔, 水沼, 謙一, 平野, 聡, 行部, 洋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2020
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.81.761

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Summary:症例は20歳,女性.咳嗽と発熱を主訴に近医を受診し,腹部造影CTにて巨大脾腫を認めた.同日夜に腹痛とともにショック状態となり,腹部造影CTで腹腔内全域に血液貯留を認め,脾臓破裂による出血性ショックと診断した.緊急開腹手術を行ったところ,脾臓は後腹膜へは固定されておらず,脾動静脈が捻転していた.脾臓の被膜から持続する出血を認めたため摘出を行った.術後経過は順調で術後18日目に自宅退院となった.後の検索により伝染性単核球症(infectious mononucleosis:IM)による脾腫であったことが判明し,遊走脾,脾捻転と共に稀な病態であった.脾捻転による静脈灌流が低下し脾動脈のみ流入することで脾腫が増大し破裂を惹起した可能性がある.IMは脾腫による脾破裂のリスクファクターであるが,遊走脾の合併例では捻転により臨床経過を修飾する可能性があり注意を要する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.81.761