開腹歴のない上行結腸の腹膜垂による絞扼性イレウスの1例

症例は70歳の女性,大腸内視鏡の前処置後の腹痛を主訴に受診した.開腹歴はなく,右下腹部に軽度圧痛を認めた.腹部CTの結果,小腸閉塞と診断し,入院となった.その後,症状の改善傾向なく,経鼻的イレウス管を留置するも,腹部膨満感は改善しなかったため,手術の方針とした.手術所見では,上行結腸の腹膜垂と後腹膜の間に索状の癒着が形成されており,そこに小腸が嵌頓していた.索状物を切除した後は,腸管の色調も改善し,腸蠕動も認めた.絞扼性イレウスで腸管壊死と判断した.開腹既往のない症例で,腹膜垂と後腹膜の癒着により絞扼性イレウスを発症するという稀な症例を経験した.開腹歴がない症例でも,絞扼性イレウスの可能性を否...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 77; no. 4; pp. 858 - 862
Main Authors 赤尾, 敬彦, 鈴木, 敏之, 松本, 裕史, 山川, 潤
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2016
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.77.858

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Summary:症例は70歳の女性,大腸内視鏡の前処置後の腹痛を主訴に受診した.開腹歴はなく,右下腹部に軽度圧痛を認めた.腹部CTの結果,小腸閉塞と診断し,入院となった.その後,症状の改善傾向なく,経鼻的イレウス管を留置するも,腹部膨満感は改善しなかったため,手術の方針とした.手術所見では,上行結腸の腹膜垂と後腹膜の間に索状の癒着が形成されており,そこに小腸が嵌頓していた.索状物を切除した後は,腸管の色調も改善し,腸蠕動も認めた.絞扼性イレウスで腸管壊死と判断した.開腹既往のない症例で,腹膜垂と後腹膜の癒着により絞扼性イレウスを発症するという稀な症例を経験した.開腹歴がない症例でも,絞扼性イレウスの可能性を否定せず,十分な経過観察を実施すること,場合によっては早期に手術を決断する必要がある.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.77.858