開心術症例に対するステイプラーを使用した左心耳切除の手術成績と問題点
[背景]開心術周術期の心原性脳梗塞の予防として左心耳を閉鎖することが重要視されている.左心耳閉鎖の方法についてはこれまでに縫合閉鎖,デバイスによる閉鎖や切除などさまざまな方法で行われているが左心耳への血流遺残や再開通による血栓形成などの問題があり,議論の余地がある.[対象と方法]2016年4月から2017年12月の期間で開心術と同時にステイプラーによる左心耳切除を行った57例を対象とし,ステイプラーによる左心耳切除の手術成績と問題点を明らかにし,その妥当性について検討した.左心耳が完全に閉鎖されているかどうかは経食道心臓超音波(TEE)で確認した.[結果]主たる手術の内訳はOff-pump C...
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Published in | 日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 48; no. 2; pp. 97 - 102 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
15.03.2019
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Subjects | |
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ISSN | 0285-1474 1883-4108 |
DOI | 10.4326/jjcvs.48.97 |
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Summary: | [背景]開心術周術期の心原性脳梗塞の予防として左心耳を閉鎖することが重要視されている.左心耳閉鎖の方法についてはこれまでに縫合閉鎖,デバイスによる閉鎖や切除などさまざまな方法で行われているが左心耳への血流遺残や再開通による血栓形成などの問題があり,議論の余地がある.[対象と方法]2016年4月から2017年12月の期間で開心術と同時にステイプラーによる左心耳切除を行った57例を対象とし,ステイプラーによる左心耳切除の手術成績と問題点を明らかにし,その妥当性について検討した.左心耳が完全に閉鎖されているかどうかは経食道心臓超音波(TEE)で確認した.[結果]主たる手術の内訳はOff-pump CABGが23例,Combined CABGが4例,Isolated Aortic Surgeryが9例,Combined Valve Surgeryが19例,Congenitalが2例であった.平均年齢69.6±8.8歳,男性46例,左心耳切除に使用したステイプルは45 mmが52例(91.2%),60 mmが5例(8.8%)であった.左心耳切除のタイミングはOff-pump CABGではグラフト吻合の前に行い,人工心肺使用症例では左室ベントを挿入する前に行った.左心耳切除は全症例(100%)で心拍動下に施行可能であった.左心耳が遺残していて追加切除が必要となったのが14例(24.6%).切除ラインからの出血のため止血目的で追加縫合を要したのが7例(12.3%)であった.またステイプラーに冠動脈を巻き込んだ症例を1例認めた.左心耳切除に要した平均時間は6.1±3.2(1.5~15.2)分であった.術後心房細動(POAF)を25例,術後脳梗塞を1例(POAFを伴わない),出血再開胸を1例,入院死亡を3例に認めた.[結語]ステイプラーを使用した左心耳切除は心停止を必要とせずに短時間で施行可能であり,再開通による血栓形成がない方法である.ただし,左心耳が遺残する可能性や冠動脈を閉塞する可能性があるため十分に確認しながら行う必要がある. |
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ISSN: | 0285-1474 1883-4108 |
DOI: | 10.4326/jjcvs.48.97 |