検診の上部消化管バリウム検査後にS状結腸穿孔をきたした1例

症例は63歳女性。健診でバリウムによる上部消化管造影検査が施行された。翌日の夜間,突然下腹部痛が出現し当院へ救急搬送となった。腹部造影CT検査で,横行結腸から直腸にかけてバリウムの遺残と骨盤底に強いアーチファクトをひく巨大なバリウム陰影を認めた。S状結腸周囲と肝表面に腹腔内遊離ガス像を認め,消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した。まず試験腹腔鏡を行ったところ,Douglas窩に汚染した腹水を認め,大網がS状結腸を被覆していた。下部消化管穿孔を疑い,下腹部正中切開で開腹した。S状結腸に約3cmの穿孔部位を認め,Douglas窩に約8cmのバリウム塊を認めたことから,バリウム塊による下部消化管穿孔と...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本腹部救急医学会雑誌 Vol. 39; no. 6; pp. 1095 - 1099
Main Authors 坂本, 快郎, 山名, 一平, 佐藤, 啓介, 岡本, 辰哉, 乘富, 智明, 三ノ宮, 寛人, 市川, 淳, 是枝, 寿彦, 進, 勇輝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本腹部救急医学会 30.09.2019
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1340-2242
1882-4781
DOI10.11231/jaem.39.1095

Cover

More Information
Summary:症例は63歳女性。健診でバリウムによる上部消化管造影検査が施行された。翌日の夜間,突然下腹部痛が出現し当院へ救急搬送となった。腹部造影CT検査で,横行結腸から直腸にかけてバリウムの遺残と骨盤底に強いアーチファクトをひく巨大なバリウム陰影を認めた。S状結腸周囲と肝表面に腹腔内遊離ガス像を認め,消化管穿孔の診断で緊急手術を施行した。まず試験腹腔鏡を行ったところ,Douglas窩に汚染した腹水を認め,大網がS状結腸を被覆していた。下部消化管穿孔を疑い,下腹部正中切開で開腹した。S状結腸に約3cmの穿孔部位を認め,Douglas窩に約8cmのバリウム塊を認めたことから,バリウム塊による下部消化管穿孔と診断した。穿孔部を挙上し双孔式人工肛門造設・腹腔内洗浄ドレナージ術を施行した。バリウムによる上部消化管造影検査後の大腸穿孔はまれであるが,重篤な転帰をとるケースも散見される。文献的考察を加えて報告する。
ISSN:1340-2242
1882-4781
DOI:10.11231/jaem.39.1095