グラム陽性菌の抗菌性因子耐性獲得機構に関する研究

生体は細菌感染防御のため種々の抗菌性因子を産生することが知られている。本研究では先天性免疫機構であるヒト抗菌性ペプチドと細菌の産生する抗菌性因子であるバクテリオシンに着目し, 生体常在菌であるStaphylococcus aureusとStreptococcus mutansの抗菌性ペプチド耐性獲得機序の検証を行った。細菌は外環境に適応するため, 細菌固有の二成分制御系因子(TCS)を有していることが知られている。そこで, TCSと抗菌性ペプチド耐性の関連性について検証した。その結果, S. aureusでは4組の, S. mutansでは3組のTCSが, 抗菌性ペプチドであるディフェンシン,...

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Published in日本細菌学雑誌 Vol. 70; no. 4; pp. 391 - 397
Main Author 松尾, 美樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本細菌学会 2015
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ISSN0021-4930
1882-4110
DOI10.3412/jsb.70.391

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Summary:生体は細菌感染防御のため種々の抗菌性因子を産生することが知られている。本研究では先天性免疫機構であるヒト抗菌性ペプチドと細菌の産生する抗菌性因子であるバクテリオシンに着目し, 生体常在菌であるStaphylococcus aureusとStreptococcus mutansの抗菌性ペプチド耐性獲得機序の検証を行った。細菌は外環境に適応するため, 細菌固有の二成分制御系因子(TCS)を有していることが知られている。そこで, TCSと抗菌性ペプチド耐性の関連性について検証した。その結果, S. aureusでは4組の, S. mutansでは3組のTCSが, 抗菌性ペプチドであるディフェンシン, LL37やバクテリオシンであるnisin Aとnukacin ISK-1に対する耐性獲得に関与していることを明らかにした。バクテリオシン耐性に関しては, S. mutansではnisin A, nukacin ISK-1耐性に各々異なるTCSが関与していたのに対し, S. aureusでは1つのTCSが両バクテリオシン耐性の本体であった。このことから, TCSは生体ならびに細菌由来の抗菌性因子に対する耐性獲得に関与すること, また, TCSを介したバクテリオシン耐性機構は, S. aureusとS. mutansでは異なっていることが明らかになった。さらにバクテリオシン産生および非産生菌を用いた共培養試験から, TCSはバクテリオシン産生菌との共存に必要であることも明らかにした。 本研究からグラム陽性菌は, ヒトや他の常在細菌が産生する抗菌性因子に対し二成分制御系を介して耐性を獲得することで生体に常在化する可能性が示唆された。
ISSN:0021-4930
1882-4110
DOI:10.3412/jsb.70.391