右側大動脈弓に合併した下行大動脈憩室の2治験例
症例1は70歳男性.既往に胆石症,左鼠径ヘルニアを有する.鼠径ヘルニア術前精査にて縦郭陰影の拡大を指摘され,当科紹介受診.精査にて右側大動脈弓,右側下行大動脈,憩室形態の下行大動脈と診断,手術加療の方針とした.自覚症状や心内奇形,他の心血管疾患は認めなかった.手術は右後側方第4肋間開胸,下半身部分体外循環にて憩室を含む下行大動脈置換術を予定した.しかし,中枢側遮断部の大動脈内膜損傷から低体温脳循環停止,open proximal法で中枢側吻合を行った.術後経過は問題なく,術後19病日に独歩退院.症例2は51歳女性.中国で出生し,15年前より日本に在住している.特記すべき既往症.健康診断にて施行...
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Published in | 日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 52; no. 1; pp. 41 - 45 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
15.01.2023
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Subjects | |
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ISSN | 0285-1474 1883-4108 |
DOI | 10.4326/jjcvs.52.41 |
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Summary: | 症例1は70歳男性.既往に胆石症,左鼠径ヘルニアを有する.鼠径ヘルニア術前精査にて縦郭陰影の拡大を指摘され,当科紹介受診.精査にて右側大動脈弓,右側下行大動脈,憩室形態の下行大動脈と診断,手術加療の方針とした.自覚症状や心内奇形,他の心血管疾患は認めなかった.手術は右後側方第4肋間開胸,下半身部分体外循環にて憩室を含む下行大動脈置換術を予定した.しかし,中枢側遮断部の大動脈内膜損傷から低体温脳循環停止,open proximal法で中枢側吻合を行った.術後経過は問題なく,術後19病日に独歩退院.症例2は51歳女性.中国で出生し,15年前より日本に在住している.特記すべき既往症.健康診断にて施行した胸部Xpにて異常陰影を指摘,胸部CTにて大動脈奇形が疑われ当科紹介受診.右側大動脈弓,右側下行大動脈,左鎖骨下動脈起始異常,Kommerell憩室の診断となった.自覚症状なく,心内奇形も認めなかった.手術は二期的手術の方針とした.初回手術として,胸骨正中切開で左鎖骨下動脈胸腔内再建を伴う全弓部置換術,オープンステントグラフト内挿術を行い,Kommerell憩室はオープンステントグラフトでカバーした.憩室そのものは背側に位置し,処理は行わなかった.術後15病日にKommerell憩室から左鎖骨下動脈起始部の塞栓術を行った.術後経過は問題なく,術後19病日独歩退院となった.右側大動脈弓に合併した下行大動脈憩室,Kommerell憩室は種々の手術方法が報告されている.文献的考察を加え報告する. |
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ISSN: | 0285-1474 1883-4108 |
DOI: | 10.4326/jjcvs.52.41 |