心不全の病理と炎症の関与

「はじめに」病理学者の田原淳博士(1873 - 1952)は心臓病理標本の丹念な観察を積み重ねて, 房室結節の発見に至ったと伝えられている. そもそも, 田原博士の研究目的は, 「心不全の間質性心筋炎説」を病理学的に検証することにあった. 当時は, 心臓の間質における炎症が心不全の原因であるという考えが支持を集めつつあったが, 田原博士の観察では心臓組織内の炎症像は見出されず, 「心不全の間質性心筋炎説」は間違いであるという結論に至った. しかし, 田原博士の時代から1世紀を経た現在, 心不全における炎症の役割が再び大きな注目を集めている. 炎症のプロセスには, 感染や組織損傷により誘導される...

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Published in心臓 Vol. 51; no. 2; pp. 220 - 226
Main Author 赤澤, 宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益財団法人 日本心臓財団 15.02.2019
日本心臓財団・日本循環器学会
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ISSN0586-4488
2186-3016
DOI10.11281/shinzo.51.220

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Summary:「はじめに」病理学者の田原淳博士(1873 - 1952)は心臓病理標本の丹念な観察を積み重ねて, 房室結節の発見に至ったと伝えられている. そもそも, 田原博士の研究目的は, 「心不全の間質性心筋炎説」を病理学的に検証することにあった. 当時は, 心臓の間質における炎症が心不全の原因であるという考えが支持を集めつつあったが, 田原博士の観察では心臓組織内の炎症像は見出されず, 「心不全の間質性心筋炎説」は間違いであるという結論に至った. しかし, 田原博士の時代から1世紀を経た現在, 心不全における炎症の役割が再び大きな注目を集めている. 炎症のプロセスには, 感染や組織損傷により誘導される急性炎症の機序だけでなく, 組織への持続的なストレスによって軽度の炎症反応が誘導され, 線維化などの組織リモデリングや機能障害を促進する慢性炎症の機序があることが明らかとなっている.
ISSN:0586-4488
2186-3016
DOI:10.11281/shinzo.51.220