北大阪におけるカルバペネム耐性腸内細菌科細菌の拡散とカルバペネム耐性増強メカニズムの解明

近年,多剤耐性菌の急速な拡散に伴い,広域抗菌薬の代表格の一つであるカルバペネムに対する耐性も広く臨床現場から報告されている。カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)は主にカルバペネム分解酵素であるカルバペネマーゼを産生することでカルバペネム耐性を獲得する。カルバペネマーゼ遺伝子は主にプラスミド上に搭載されており,菌種を超えて拡散するとされていたが,実際にどのように地域に拡散していくかについては,ごく小規模の試みしかない状況であった。本研究は北大阪地域の43医療施設にて分離された230株のCREについて,全ゲノム解析およびサザンブロッティング法を組み合わせ,薬剤耐性遺伝子の主な運び手であるプラス...

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Published in日本細菌学雑誌 Vol. 77; no. 2; pp. 129 - 138
Main Author 阿部, 隆一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本細菌学会 2022
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ISSN0021-4930
1882-4110
DOI10.3412/jsb.77.129

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Summary:近年,多剤耐性菌の急速な拡散に伴い,広域抗菌薬の代表格の一つであるカルバペネムに対する耐性も広く臨床現場から報告されている。カルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)は主にカルバペネム分解酵素であるカルバペネマーゼを産生することでカルバペネム耐性を獲得する。カルバペネマーゼ遺伝子は主にプラスミド上に搭載されており,菌種を超えて拡散するとされていたが,実際にどのように地域に拡散していくかについては,ごく小規模の試みしかない状況であった。本研究は北大阪地域の43医療施設にて分離された230株のCREについて,全ゲノム解析およびサザンブロッティング法を組み合わせ,薬剤耐性遺伝子の主な運び手であるプラスミドに焦点を絞った解析を行うことにより,北大阪地域におけるCREの拡散は単一プラスミドpKPI-6の拡散によることを明らかにしたものである。同時にヘテロ耐性や薬剤耐性スペクトラムの拡大,カルバペネム耐性の増強など多様な表現型を持つ株が派生しており,その生成メカニズムを明らかにしてきた。本稿では筆者の研究成果を中心に,CREの地域拡散メカニズムについて紹介する。
ISSN:0021-4930
1882-4110
DOI:10.3412/jsb.77.129