三叉神経領域における炎症誘発痛覚変調性疼痛モデルを用いた前臨床薬効評価法
2017年に国際疼痛学会から第3の痛みの機序分類である「痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)」という新しい概念が提唱された.これは,侵害受容器の活性化や神経障害をともなわずに訴えられる痛みとして定義されている1). 痛覚変調性疼痛の機構を持つ疾患として,線維筋痛症,複合性局所疼痛症候群,過敏性腸症候群,慢性一次性顎関節痛,また口腔灼熱痛症候群などが挙げられるが,痛覚変調性疼痛を適応として承認されている薬物はまだ存在しない.神経障害性疼痛の概念が変更されたことで,新しい痛みの機序分類として痛覚変調性疼痛が出現したために,それにあわせて薬物の適応を変更することや,痛覚変調性疼痛に適応...
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Published in | 日本口腔顔面痛学会雑誌 Vol. 16; no. 1; pp. 25 - 32 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本口腔顔面痛学会
2024
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1883-308X 1882-9333 |
DOI | 10.11264/jjop.16.25 |
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Summary: | 2017年に国際疼痛学会から第3の痛みの機序分類である「痛覚変調性疼痛(nociplastic pain)」という新しい概念が提唱された.これは,侵害受容器の活性化や神経障害をともなわずに訴えられる痛みとして定義されている1). 痛覚変調性疼痛の機構を持つ疾患として,線維筋痛症,複合性局所疼痛症候群,過敏性腸症候群,慢性一次性顎関節痛,また口腔灼熱痛症候群などが挙げられるが,痛覚変調性疼痛を適応として承認されている薬物はまだ存在しない.神経障害性疼痛の概念が変更されたことで,新しい痛みの機序分類として痛覚変調性疼痛が出現したために,それにあわせて薬物の適応を変更することや,痛覚変調性疼痛に適応をもつ薬物を新規に開発することは,今後の重要な課題である.しかしながら,痛覚変調性疼痛を評価できる前臨床動物モデルはまだ少ない2). 我々は,催炎症薬ホルマリンを用いて口唇部に炎症を惹起させると,器質的異常のない両側後肢に痛覚過敏が生じるという痛覚変調性疼痛が想定される動物モデルを用いて3),神経障害性疼痛治療薬として広く使用されているpregabalin (PGB)を10日間連日投与した実験を行った.ホルマリン投与6日目においても観察される疼痛状態に対してPGBの緩和効果は示され,さらにホルマリン投与10日目には,生じていた中枢性感作はPGBの連日投与により緩和される結果を報告している4).本総説ではその作用機序について概説する. |
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ISSN: | 1883-308X 1882-9333 |
DOI: | 10.11264/jjop.16.25 |