コメント1:「聞くこと」と「書くこと」(<特集>オーラリティとはなにか)

オーラル・ヒストリーが論じられるなかで、声が複数性と重層性をもつこと、複数の声と声の複数性を認識しなければならないこと-声は決して、単一の声として把握できないことは、多々論じられてきた。だが、同様のことはその記述に関わっても問われている。声の複数性は記述における論点でもある。歴史学は、1990年代以降、「書くこと」すなわち叙述の問題についての議論をおこなってきた。かかる立場から見るときには、オーラル・ヒストリーは、「オーラル」に議論が集中し、「ヒストリー」であることが忘却とは言わずも、軽視されていたように見える。声の可能性から、声を介した歴史の可能性へ。オーラリティーから、オーラル・ヒストリー...

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Published in日本オーラル・ヒストリー研究 Vol. 4; pp. 47 - 52
Main Author 成田, 龍一
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本オーラル・ヒストリー学会 11.10.2008
Japan Oral History Association
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ISSN1882-3033
2433-3026
DOI10.24530/jjoha.4.0_47

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Summary:オーラル・ヒストリーが論じられるなかで、声が複数性と重層性をもつこと、複数の声と声の複数性を認識しなければならないこと-声は決して、単一の声として把握できないことは、多々論じられてきた。だが、同様のことはその記述に関わっても問われている。声の複数性は記述における論点でもある。歴史学は、1990年代以降、「書くこと」すなわち叙述の問題についての議論をおこなってきた。かかる立場から見るときには、オーラル・ヒストリーは、「オーラル」に議論が集中し、「ヒストリー」であることが忘却とは言わずも、軽視されていたように見える。声の可能性から、声を介した歴史の可能性へ。オーラリティーから、オーラル・ヒストリーへ-その往還が考察される必要があろう。「聞くこと」と「書くこと」とが、ともに考察されねばならないであろうと思う。
ISSN:1882-3033
2433-3026
DOI:10.24530/jjoha.4.0_47