非可聴領域の周波数を含む音を脳は区別できるのか

我々の聴覚能力の上限は,およそ20kHzと考えられている.一方,非可聴領域の周波数を含む音(非可聴音)が生理活動に及ぼす影響が報告されていることから,ヒトは何かしらの方法で非可聴音を受容していると考えられる.2種類の異なる可聴域周波数を含む音を呈示した場合,ミスマッチ陰性電位(MMN)が観測される.MMNは,事象関連電位の一つであり,被検者の注意や意識に依存しない感覚情報自動処理関連電位と考えられている.ヒトは非可聴音を識別できないが,何かしらの方法で受容していることから,非可聴音に対する感覚情報自動処理関連電位が観測される可能性がある.そこで本研究では,非可聴音を用いたMMNの計測を試みた....

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Published in生体医工学 Vol. Annual58; no. Abstract; p. 324
Main Authors 竹内, 章, 常盤, 達司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2020
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual58.324

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Summary:我々の聴覚能力の上限は,およそ20kHzと考えられている.一方,非可聴領域の周波数を含む音(非可聴音)が生理活動に及ぼす影響が報告されていることから,ヒトは何かしらの方法で非可聴音を受容していると考えられる.2種類の異なる可聴域周波数を含む音を呈示した場合,ミスマッチ陰性電位(MMN)が観測される.MMNは,事象関連電位の一つであり,被検者の注意や意識に依存しない感覚情報自動処理関連電位と考えられている.ヒトは非可聴音を識別できないが,何かしらの方法で受容していることから,非可聴音に対する感覚情報自動処理関連電位が観測される可能性がある.そこで本研究では,非可聴音を用いたMMNの計測を試みた.被験者は,書面により同意が得られた健常人7名(男性5名,22.4±1.3歳)とした.被検者を安静に着座させ,音刺激に注意を向けないよう実験中に読書を指示した.拡張10-20法に従い,探査電極(Fz, Pz, Cz, C3, C4),参照電極A2,GND電極Fpzを配置した.標的刺激25 kHz,標的刺激30 kHzとし,呈示間隔500 ms,時間100 ms,頻度8:2,総刺激回数800回とした.音刺激は音圧80 dB SPLで被験者の右耳に呈示した.計測された脳波を刺激種類に分けて加算平均し,それらの差分波形を算出した.差分波形から,一般的に知られているMMN成分と同様の陰性ピーク及び電位分布が確認された.この結果は,脳が周波数の異なる非可聴音を区別している可能性を示唆している.
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual58.324