慢性腎不全および透析療法と Oxalosis
慢性の腎疾患あるいは長期人工透析をうけた患者の重大な合併症の一つに, いわゆる二次性 Oxalosis がある. しかし, この分野にはあまり注意が払われていないようである. この報告の目的は, 腎と心筋組織への蓚酸結晶沈着の程度と, 基礎疾患および透析療法との関係を検討することである. 対象28例の剖検の基礎疾患は, 慢性糸球体腎炎13例, 原発性過蓚酸尿症1例, ネフローゼ加味腎炎1例, Shönlein-Henoch 1例, 腎硬化症1例, 腎結石1例, 心不全1例, 原因不明4例, また10例は透析療法をうけた. 結果は結晶沈着が腎にあるもの15例, 心に6例, 両者にあるもの6例,...
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Published in | 日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 71; no. 12; pp. 1423 - 1431 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本泌尿器科学会
01.12.1980
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ISSN | 0021-5287 1884-7110 |
DOI | 10.5980/jpnjurol1928.71.12_1423 |
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Summary: | 慢性の腎疾患あるいは長期人工透析をうけた患者の重大な合併症の一つに, いわゆる二次性 Oxalosis がある. しかし, この分野にはあまり注意が払われていないようである. この報告の目的は, 腎と心筋組織への蓚酸結晶沈着の程度と, 基礎疾患および透析療法との関係を検討することである. 対象28例の剖検の基礎疾患は, 慢性糸球体腎炎13例, 原発性過蓚酸尿症1例, ネフローゼ加味腎炎1例, Shönlein-Henoch 1例, 腎硬化症1例, 腎結石1例, 心不全1例, 原因不明4例, また10例は透析療法をうけた. 結果は結晶沈着が腎にあるもの15例, 心に6例, 両者にあるもの6例, また人工透析施行例のうち90%が沈着を認めたのに比し, 然らざるものは61%であつた. 臨床との関係でとくに興味深かつたのは, 高カリウム血症, 洞房 block その他の異常所見が透析療法によつて十分に改善したにもかかわらず, 突然死を3例認めたことで, 剖検によつて洞結節, 房室結節や His 束など刺激伝導系に蓚酸の沈着を確かめたことである. 腎臓および心臓への蓚酸塩沈着の頻度は, Fayemi (1979, 2) らの報告と大凡類似している. 二次性 Oxalosis によつて, しばしば組織の局所的な壊死や広範な線維化の誘因となりえよう. 心臓であれば, うつ血性心不全や刺激伝導障害を招来してくる可能性は十分ある. 人工透析や慢性腎疾患の管理に際しては, 常に本疾患を考慮しておく必要があろう. |
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ISSN: | 0021-5287 1884-7110 |
DOI: | 10.5980/jpnjurol1928.71.12_1423 |