疾病予防分野から:地域の新しい予防と医療の連携システム構築

わが国は先進諸国で最も高度な高齢社会になり,今後も加速度的に高齢化が進む.超高齢社会が到来し社会保障を巡る多くの問題が惹起され,とりわけ広義の医療提供体制のあり方は喫緊の課題になっている.超高齢社会では,疾病予防および重症化予防をより一層効果的に進めることが必要である.生活習慣病の予防対策として特定健診保健指導制度が導入されてから 7 年が経過したが,この予防介入施策について正確な評価が期待されている.そこで,地域の国保加入者を対象に保健指導効果が持続するかについて時系列的に評価を行った.その結果,特定保健指導による効果は 6 年間にわたって持続していたことが明らかになった.高齢化の進展には地...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in保健医療科学 Vol. 65; no. 1; pp. 9 - 15
Main Author 今井, 博久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 国立保健医療科学院 29.02.2016
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN1347-6459
2432-0722
DOI10.20683/jniph.65.1_9

Cover

More Information
Summary:わが国は先進諸国で最も高度な高齢社会になり,今後も加速度的に高齢化が進む.超高齢社会が到来し社会保障を巡る多くの問題が惹起され,とりわけ広義の医療提供体制のあり方は喫緊の課題になっている.超高齢社会では,疾病予防および重症化予防をより一層効果的に進めることが必要である.生活習慣病の予防対策として特定健診保健指導制度が導入されてから 7 年が経過したが,この予防介入施策について正確な評価が期待されている.そこで,地域の国保加入者を対象に保健指導効果が持続するかについて時系列的に評価を行った.その結果,特定保健指導による効果は 6 年間にわたって持続していたことが明らかになった.高齢化の進展には地域差が非常に大きい.とりわけ,埼玉県は2025年に向けて75歳以上の人口増加率が全国で最も大きい.埼玉県は予防可能で医療費への影響が大きい糖尿病性腎症に焦点を当てその重症化予防事業を平成26年度から開始した.県単位の事業展開はわが国で唯一の試みであり,今後はその方法論や成果などの発信が期待される.一方,人口規模が小さい滋賀県甲良町は人工透析新規導入者を出現させないことを目指した予防活動を展開している.その特徴は予防と医療のきめ細かな連携であり,プライマリケア医と専門医の連携であり,行政保健師の円滑な橋渡し機能である.自験例と事例分析から2025年問題に向けた方向性が示唆された.すなわち,生活習慣病に対する予防介入は効果があり,また予防分野と医療分野の緊密な連携は重症化予防では必要不可欠である.従来から連携した活動の重要性は指摘されてきたが,実効性ある連携は多くなかった.ICTが高度に発達し,膨大な健診データと医療データを連結することが容易になったが,今後は地域医療におけるステークホルダー間で有用な情報が共有され,信頼関係を築いた有機的な連携システムを構築することが急務である.
ISSN:1347-6459
2432-0722
DOI:10.20683/jniph.65.1_9