Mapping による膀胱癌の発育進展形式に関する病理学的研究

リンパ節廓清を含む根治的膀胱全摘を行つた90例の膀胱癌について検討した. 5年生存率は low stage で80.6%, high stage で39.7%であつた. 膀胱全摘後の尿道再発は7.4%にみられた. 64例はリンパ節転移を認めず, リンパ節転移がない場合, 5年生存率は92.9%であつた. 26例にリンパ節転移が1個以上認められ, リンパ節転移がある場合には5年生存率26.8%であつた. 全摘された膀胱の全割標本を作製し, 膀胱粘膜全体にわたつて検討した. Cancer, carcinoma insitu, atypia の分布を mapping により表示した. この mapp...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 71; no. 8; pp. 829 - 839
Main Authors 村瀬, 達良, 藤田, 潤, 垣添, 忠生, 松本, 恵一, 岸, 紀代三, 下里, 幸雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 01.08.1980
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Summary:リンパ節廓清を含む根治的膀胱全摘を行つた90例の膀胱癌について検討した. 5年生存率は low stage で80.6%, high stage で39.7%であつた. 膀胱全摘後の尿道再発は7.4%にみられた. 64例はリンパ節転移を認めず, リンパ節転移がない場合, 5年生存率は92.9%であつた. 26例にリンパ節転移が1個以上認められ, リンパ節転移がある場合には5年生存率26.8%であつた. 全摘された膀胱の全割標本を作製し, 膀胱粘膜全体にわたつて検討した. Cancer, carcinoma insitu, atypia の分布を mapping により表示した. この mapping と腫瘍の growth pattem の分析により次の4つの腫瘍の型に分類した. Type 1は限局型で乳頭状, 非浸潤性の腫瘍が主体となる型であり, 軽度の異型性が腫瘍の周囲にみられる型である. Type 2は多発性, 非浸潤性であり, 異型性を示す部位が腫瘍から離れた部位にも存在する型である. Type 3は多発性, 浸潤性であり, 多発性の Ca. in situ が腫瘍からはなれた部位にも存在する型である. Type 4は限局型, 浸潤性の腫瘍で, 病巣部以外の膀胱粘膜に前癌病変を思わせる所見のない型である. この type の腫瘍は急速に進展し極めて悪性である. 前記のこき各 type の臨床経過を分析し膀胱癌に対する治療法が各 type により提案された. Type 1: この type の腫瘍はTURまたは部分切除により十分管理可能である. T2以上の場合に全摘を行う. Type 2: この type は基本的にTURにより管理されるが, しぼしぼ再発がみられるため十分な follow up を行い, T2以上と診断される時は全摘が適応となる. Type 3: この type は尿道切除を含む膀胱全摘, リンパ節廓清が必要である. Type 4: この type の場合, 膀胱全摘, リンパ節廓清は早期に行う必要がある.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.71.8_829