高齢者脳血管障害における運動機能の回復過程に関する検討
目的:発症後3カ月から10カ月間にわたり高齢者脳血管障害患者の回復過程を介護予防市町村モデル事業中間報告の運動機能評価に準じて調査した.方法:対象は過去3カ月以内に脳血管疾患を発症した14名の患者(男性8名,女性6名,年齢77.4±6.5歳,入院日数164.6±33.1日)とした.評価項目は,握力測定,片脚立位テスト,ファンクショナルリーチ,棒落下テスト,Time up & goテスト(TUGT)とした.最も回復した数値を100%とし,それに対する割合を機能回復率として算出した.結果:握力は健側と患側ともに発症6カ月で最大回復値を示したが,発症12カ月では最大回復値の76.1%(健側)...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 47; no. 3; pp. 213 - 219 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
2010
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.47.213 |
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Summary: | 目的:発症後3カ月から10カ月間にわたり高齢者脳血管障害患者の回復過程を介護予防市町村モデル事業中間報告の運動機能評価に準じて調査した.方法:対象は過去3カ月以内に脳血管疾患を発症した14名の患者(男性8名,女性6名,年齢77.4±6.5歳,入院日数164.6±33.1日)とした.評価項目は,握力測定,片脚立位テスト,ファンクショナルリーチ,棒落下テスト,Time up & goテスト(TUGT)とした.最も回復した数値を100%とし,それに対する割合を機能回復率として算出した.結果:握力は健側と患側ともに発症6カ月で最大回復値を示したが,発症12カ月では最大回復値の76.1%(健側),68.6%(患側)となった.片脚立位テストは発症7カ月で最大回復値72.8%を示したが,発症12カ月では最大回復値の24.5%となった.ファンクショナルリーチは発症4カ月で最大回復値86.9%を示したが,発症12カ月では最大回復値の57.5%となった.棒落下テストは発症6カ月で最大回復値83.5%を示したが,発症12カ月では最大回復値の63.8%となった.TUGTは発症5カ月で最大回復値90.4%を示したが,発症12カ月では最大回復値の64.1%となった.結論:最も早く回復ピークに達したのはファンクショナルリーチであった.一方,片脚立位は他の項目よりやや遅れて発症後7カ月で最大回復に達した.最大回復後,握力は他の検査項目と比して機能を維持するが,片脚立位,ファンクショナルリーチ,棒落下,TUGTは減少の一途を辿った.特に,平衡機能に関与する片脚立位とファンクショナルリーチの低下が著しかった.平衡機能の低下は転倒リスクの増大を招き,脳血管障害後の二次的障害を生むことになるため,転倒予防対策の必要性が求められる.以上より,退院後のリハビリテーションのあり方について検証する必要が示唆された. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.47.213 |