終末期の医療およびケアに関する意識調査

目的:超高齢社会である我が国では後期高齢者(75歳以上)が増え,その死亡者数が増加している.終末期においても高齢者特有の問題があり,高齢者終末期の医療やケアをどうするのがよいか,は大きな課題である.これまで,終末期の医療やケアについて,後期高齢者自身がどのような考えや希望を持っているかを,若い人たちと比べて検討した報告はほとんどない.今回その特徴を明らかにする目的でアンケート調査を実施した.方法:2005年3月に行った高齢者医療に関する市民公開講座の参加者にアンケート調査を行い,回答のあった176名(平均64.7歳)を解析対象とした.リビングウィルや尊厳死の宣言書を知っているか,終末期の治療方...

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Published in日本老年医学会雑誌 Vol. 53; no. 4; pp. 374 - 378
Main Authors 西岡, 弘晶, 荒井, 秀典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年医学会 25.10.2016
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ISSN0300-9173
DOI10.3143/geriatrics.53.374

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Summary:目的:超高齢社会である我が国では後期高齢者(75歳以上)が増え,その死亡者数が増加している.終末期においても高齢者特有の問題があり,高齢者終末期の医療やケアをどうするのがよいか,は大きな課題である.これまで,終末期の医療やケアについて,後期高齢者自身がどのような考えや希望を持っているかを,若い人たちと比べて検討した報告はほとんどない.今回その特徴を明らかにする目的でアンケート調査を実施した.方法:2005年3月に行った高齢者医療に関する市民公開講座の参加者にアンケート調査を行い,回答のあった176名(平均64.7歳)を解析対象とした.リビングウィルや尊厳死の宣言書を知っているか,終末期の治療方針を決めるのは誰が適当か,終末期に希望する栄養補給法はどれか,終末期に受けたくない医療行為はどれか,を質問した.74歳以下群と75歳以上群にわけ,回答を比較した.結果:リビングウィルを知っている人は全体の49%,作成済みの人は8%で,2群間で差はなかった.治療方針の決定者に「自分」を選ぶ人が両群とも最多であったが(74歳以下76%,75歳以上63%),75歳以上では「担当医」の割合が増えた.「家族」を選ぶ人は両群でほぼ同じであった(74歳以下16%,75歳以上14%).終末期の栄養補給法に経口摂取だけを望む人は全体の54%で,2群間で差はなかった.終末期に受けたくない医療行為については,75歳以上のほうが,それらを選ぶ人の割合が少ない傾向があった.結論:後期高齢者も74歳以下と同様に終末期医療やケアについて自己決定を望む人が多かった.終末期に希望する栄養補給法や希望しない医療行為に,大きな違いは見られなかった.高齢者本人の意思決定をサポートし,高齢者の過剰医療にも過少医療にも注意を払うことが大切であることが示唆された.
ISSN:0300-9173
DOI:10.3143/geriatrics.53.374