回復期脳血管障害患者の誤嚥性肺炎発症要因の検討
目的:肺炎は脳血管障害患者に好発する合併症の1つであり,その発生機序の多くが誤嚥性肺炎である.誤嚥性肺炎は口腔内細菌叢の誤嚥による侵襲と咳嗽反射や免疫能などの宿主の抵抗反応のバランスの崩壊によって発症するとされる.しかし,現在までの報告の多くが誤嚥や嚥下障害に着目したものであり,宿主抵抗に関する報告は乏しい.本研究では,嚥下障害を有する脳血管障害患者のみを対象として,誤嚥性肺炎発症における宿主抵抗の重要性について検討した.方法:脳梗塞または脳出血の診断を受け,回復期リハビリテーション施設4病院に新規入院した175名のうち,入院時点で嚥下障害を有していた76名(平均年齢74.7±8.4歳,男性2...
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Published in | 日本老年医学会雑誌 Vol. 51; no. 4; pp. 364 - 368 |
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Main Authors | , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本老年医学会
2014
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Subjects | |
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ISSN | 0300-9173 |
DOI | 10.3143/geriatrics.51.364 |
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Summary: | 目的:肺炎は脳血管障害患者に好発する合併症の1つであり,その発生機序の多くが誤嚥性肺炎である.誤嚥性肺炎は口腔内細菌叢の誤嚥による侵襲と咳嗽反射や免疫能などの宿主の抵抗反応のバランスの崩壊によって発症するとされる.しかし,現在までの報告の多くが誤嚥や嚥下障害に着目したものであり,宿主抵抗に関する報告は乏しい.本研究では,嚥下障害を有する脳血管障害患者のみを対象として,誤嚥性肺炎発症における宿主抵抗の重要性について検討した.方法:脳梗塞または脳出血の診断を受け,回復期リハビリテーション施設4病院に新規入院した175名のうち,入院時点で嚥下障害を有していた76名(平均年齢74.7±8.4歳,男性29名)を対象とした.対象者を入院期間中の肺炎発症の有無により2群に分類し,2群間で入院時の特徴を後方視的に比較・検討した.結果:入院期間中に肺炎を発症したのは10名(13.2%)であり,そのすべてが65歳以上の高齢者であった.2群間の比較では性別,活動レベル,血清アルブミン,食事形態,嚥下障害重症度の項目で有意差がみとめられた(p<0.05).結論:本研究から嚥下障害を有する脳血管障害の肺炎発症要因として女性,臥床,低栄養状態,経管栄養,重度嚥下障害の存在が挙げられた.誤嚥性肺炎発症は嚥下障害と非常に密接に関係している一方で,臥床や低栄養状態などの宿主抵抗も重要な関連因子であることが示された. |
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ISSN: | 0300-9173 |
DOI: | 10.3143/geriatrics.51.364 |