肝静脈にのみ膜様閉塞を認めたBudd-Chiari症候群の1例

症例は33才男性. 検診にて肝機能異常を指摘され, 全身倦怠感もあるため当科受診した. 超音波検査にて肝静脈合流異常と, 左肝静脈流出路閉塞を疑われ入院精査となつた. 入院時肝腫大の他は, 下肢浮腫や腹壁静脈怒張はなかつた. 肝静脈造影にて右肝静脈は下大静脈流入部直前で狭窄, 中肝静脈合流異常, 左肝静脈閉塞を認めた. 下大静脈には狭窄を認めず, 肝部下大静脈に狭窄を認めないBudd-Chiari症候群(Chiari病)と診断した. 開腹し直視下に狭窄を解除する手術が行われ, 右肝静脈の膜様閉塞であることが明らかになつた. 中央に径2mmの穴が存在した. 本邦では下大静脈に狭窄のないBudd-...

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Published in医療 Vol. 44; no. 3; pp. 309 - 313
Main Authors 森, 博志, 武者, 広隆, 高澤, 博, 御園生, 正紀, 小林, 千鶴子, 篠崎, 文信, 遊佐, 昌樹, 鈴木, 一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国立医療学会 1990
国立医療学会
Subjects
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ISSN0021-1699
1884-8729
DOI10.11261/iryo1946.44.309

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Summary:症例は33才男性. 検診にて肝機能異常を指摘され, 全身倦怠感もあるため当科受診した. 超音波検査にて肝静脈合流異常と, 左肝静脈流出路閉塞を疑われ入院精査となつた. 入院時肝腫大の他は, 下肢浮腫や腹壁静脈怒張はなかつた. 肝静脈造影にて右肝静脈は下大静脈流入部直前で狭窄, 中肝静脈合流異常, 左肝静脈閉塞を認めた. 下大静脈には狭窄を認めず, 肝部下大静脈に狭窄を認めないBudd-Chiari症候群(Chiari病)と診断した. 開腹し直視下に狭窄を解除する手術が行われ, 右肝静脈の膜様閉塞であることが明らかになつた. 中央に径2mmの穴が存在した. 本邦では下大静脈に狭窄のないBudd-Chiari症候群はまれで, 本症例のように根治手術がなされ, 肝静脈のみの膜様閉塞であることが組織学的にも明らかになつたのは貴重な例と考え報告した
ISSN:0021-1699
1884-8729
DOI:10.11261/iryo1946.44.309