VI.潰瘍性大腸炎関連癌の分子生物学的アプローチを用いた診断法

潰瘍性大腸炎(UC)症例は大腸癌発生リスクが報告されており,UC関連大腸癌(UC-CRC)として知られ,発癌様式の違いから散発性大腸癌と区別される.UC-CRCの問題点は,若年発症および予後不良,診断困難性にあり,早期発見および診断の一助となるマーカーの開発は重要な課題である.時間依存的,空間依存的な発癌リスクを反映した内視鏡サーベイランスが行われているが,形態的な変化から前癌病変を捉えることは困難な場合がある.形態的変化を生じる以前から,前癌病変としての分子生物学な変化を生じる現象はfield effectとして知られ,発癌素地としての空間的な変化を反映する可能性がある.さらに,UCに特徴的...

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Published in日本大腸肛門病学会雑誌 Vol. 75; no. 10; pp. 478 - 486
Main Authors 大北, 喜基, 川村, 幹雄, 山本, 晃, 志村, 匡信, 問山, 裕二, 今岡, 裕基
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本大腸肛門病学会 2022
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ISSN0047-1801
1882-9619
DOI10.3862/jcoloproctology.75.478

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Summary:潰瘍性大腸炎(UC)症例は大腸癌発生リスクが報告されており,UC関連大腸癌(UC-CRC)として知られ,発癌様式の違いから散発性大腸癌と区別される.UC-CRCの問題点は,若年発症および予後不良,診断困難性にあり,早期発見および診断の一助となるマーカーの開発は重要な課題である.時間依存的,空間依存的な発癌リスクを反映した内視鏡サーベイランスが行われているが,形態的な変化から前癌病変を捉えることは困難な場合がある.形態的変化を生じる以前から,前癌病変としての分子生物学な変化を生じる現象はfield effectとして知られ,発癌素地としての空間的な変化を反映する可能性がある.さらに,UCに特徴的な直腸から連続する持続性炎症は,epigenetic driftと呼ばれるエピゲノム変化の蓄積を直腸優位に引き起こす可能性があり,発癌素地としての時間的変化を反映する可能性がある.これらの現象を掛け合わせ,かつ癌特異的な変化を評価できる方法を開発することが,UC-CRC診断およびサーベイランスに有益な新たな診断マーカーの開発につながる可能性がある.本稿では,既知の分子生物学的観点からのUC-CRC診断バイオマーカーと当科の新たなサーベイランス法の開発研究につき概説する.
ISSN:0047-1801
1882-9619
DOI:10.3862/jcoloproctology.75.478