がん幹細胞を標的とした免疫療法

がん幹細胞は,(1)高い造腫瘍能を有し,(2)自己複製能を有し,(3)多分化能を有する細胞群と定義される(図1).これらの幹細胞様性質を有するため,わずかな個数でもがん幹細胞を免疫不全動物に移植すると新たにがんを形成することができる.また,がん幹細胞は化学療法や放射線療法といった現在の主ながんの治療法に対して抵抗性を示すことが知られている.このことから,がんの遠隔転移や治療後の再発といった臨床上患者の予後を直接左右するイベントにがん幹細胞は深く関わっていると考えられる.近年,がんに対する免疫療法は外科的療法,化学療法,放射線療法に次ぐ第4の治療法として注目されつつある.本稿では,化学療法や放射...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in顕微鏡 Vol. 46; no. 2; pp. 100 - 104
Main Authors 道振, 義貴, 廣橋, 良彦, 平塚, 博義, 佐藤, 昇志
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本顕微鏡学会 30.06.2011
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:がん幹細胞は,(1)高い造腫瘍能を有し,(2)自己複製能を有し,(3)多分化能を有する細胞群と定義される(図1).これらの幹細胞様性質を有するため,わずかな個数でもがん幹細胞を免疫不全動物に移植すると新たにがんを形成することができる.また,がん幹細胞は化学療法や放射線療法といった現在の主ながんの治療法に対して抵抗性を示すことが知られている.このことから,がんの遠隔転移や治療後の再発といった臨床上患者の予後を直接左右するイベントにがん幹細胞は深く関わっていると考えられる.近年,がんに対する免疫療法は外科的療法,化学療法,放射線療法に次ぐ第4の治療法として注目されつつある.本稿では,化学療法や放射線療法に対して治療抵抗性を示すがん幹細胞に対して,免疫療法が有効であるか,また,そのような治療が現実的に可能になるか今後の展望も含め考察する.
ISSN:1349-0958
2434-2386
DOI:10.11410/kenbikyo.46.2_100