STEMトモグラフィによる厚切り切片の観察

STEMは生物試料の観察にはなじみの薄い結像法ではあるが,トモグラフィと組み合わせた場合には数々のメリットがあることが明らかになった.1)試料の厚さに対して強い.STEMでは基本的に対物レンズの色収差の影響を受けないため,これに起因する像質の悪化がない.2)傾斜時にも全視野にフォーカスが合う.試料を高傾斜した時,TEMでは試料のごく一部にしかフォーカスをあわせることができないが,STEMではフォーカスを変えながらスキャンすることにより像全体にわたりフォーカスをあわせることが可能である.3)環状暗視野検出器により,高コントラストの暗視野像が得やすい.また,そのとき結像に使う電子の散乱角を自由に選...

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Published in顕微鏡 Vol. 44; no. 4; pp. 241 - 247
Main Author 青山, 一弘
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本顕微鏡学会 30.12.2009
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ISSN1349-0958
2434-2386
DOI10.11410/kenbikyo.44.4_241

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Summary:STEMは生物試料の観察にはなじみの薄い結像法ではあるが,トモグラフィと組み合わせた場合には数々のメリットがあることが明らかになった.1)試料の厚さに対して強い.STEMでは基本的に対物レンズの色収差の影響を受けないため,これに起因する像質の悪化がない.2)傾斜時にも全視野にフォーカスが合う.試料を高傾斜した時,TEMでは試料のごく一部にしかフォーカスをあわせることができないが,STEMではフォーカスを変えながらスキャンすることにより像全体にわたりフォーカスをあわせることが可能である.3)環状暗視野検出器により,高コントラストの暗視野像が得やすい.また,そのとき結像に使う電子の散乱角を自由に選択できる.4)コントラストがリニアである.STEMでは対物レンズの球面収差の影響も受けず,またデフォーカスする必要も無いため,これらに由来するアーティフィシャルなコントラストとは無縁である.
ISSN:1349-0958
2434-2386
DOI:10.11410/kenbikyo.44.4_241