東京都特別区における保健師学生の技術到達度に関する学生・教員・保健師による評価
目的 より質の高い保健師養成を目指し,保健師教育は保健師・看護師の統合カリキュラムから学部選択制や大学院教育への変革期を迎えており,その教育成果を適切に評価していく必要がある。しかし,従来の保健師教育の評価に関する国内外の研究は,一機関の学生のみを対象にしたものが多く,評価の精度を高めるためにも多角的な視点による調査が求められている。そこで本研究の目的を,保健師学生の卒業時の技術到達度について,東京都特別区内 7 大学の学生・教員ならびに特別区保健師を対象として多角的に評価し,統合カリキュラム最終年度の各対象からみた学生の到達度評価の現状と,保健師教育の課題を把握することとした。 方法 対象は...
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Published in | 日本公衆衛生雑誌 Vol. 62; no. 12; pp. 729 - 737 |
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Main Authors | , , , , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本公衆衛生学会
2015
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Subjects | |
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Summary: | 目的 より質の高い保健師養成を目指し,保健師教育は保健師・看護師の統合カリキュラムから学部選択制や大学院教育への変革期を迎えており,その教育成果を適切に評価していく必要がある。しかし,従来の保健師教育の評価に関する国内外の研究は,一機関の学生のみを対象にしたものが多く,評価の精度を高めるためにも多角的な視点による調査が求められている。そこで本研究の目的を,保健師学生の卒業時の技術到達度について,東京都特別区内 7 大学の学生・教員ならびに特別区保健師を対象として多角的に評価し,統合カリキュラム最終年度の各対象からみた学生の到達度評価の現状と,保健師教育の課題を把握することとした。 方法 対象は,特別区内 7 大学の学生663人と教員20人,特別区の保健師86人とした。統合カリキュラム最終年度にあたる2013年度に地域看護学実習を行った学生が,「保健師教育の技術項目と卒業時の到達度」の98項目を到達しているかどうかを問う無記名自記式質問紙調査を実施した。 結果 学生が各項目を「到達できた」と回答した割合(到達割合)の平均は,学生67.9%,教員40.9%,保健師44.4%であった。各項目の到達割合が 8 割以上の項目数は,学生23項目,教員 7 項目,保健師 0 項目であり,5 割未満の項目は,学生13項目,教員66項目,保健師70項目であった。到達割合上位10位のうち 3 者共通のものが 6 項目あり,アセスメント,信頼関係の構築,個人情報やプライバシーの保護などが含まれていた。下位10項目中,共通項目は 4 項目であり,当事者とのチーム形成や,健康危機管理に関することなどが含まれていた。 結論 各対象の到達割合は 8 割に満たないものが多く,さらに,教員・保健師の結果では半数以上の項目が 5 割未満であり,統合カリキュラムにおいて,実習期間も制約された中で保健師養成のための講義・実習を行うには限界があると考えられる。 |
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ISSN: | 0546-1766 2187-8986 |
DOI: | 10.11236/jph.62.12_729 |