種の感受性分布を用いた68種の水稲用農薬の生態影響評価

日本で主に使用されている水稲用農薬68種を対象に,高次の生態影響評価として,文献から得られた毒性データに基づいて種の感受性分布 (SSD) の解析を行った.SSDは,予測無影響濃度を推定したり,農薬による生態リスクを定量化したりするために有効である.SSDの5パーセンタイル値 (HC5) を計算して,これを予測無影響濃度とした.現行の水産動植物の被害防止に係る登録保留基準値とHC5値を比較したところ,68農薬のうち50農薬でその差は小さかった (10倍以内).ところが,特定の作用機作に分類される9種の殺虫剤と9種の除草剤では,登録保留基準値が10倍以上高かった.すなわち,特定の作用機作の農薬に...

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Published inJournal of Pesticide Science Vol. 41; no. 1; pp. 6 - 14
Main Author 永井, 孝志
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 日本農薬学会 2016
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ISSN1348-589X
1349-0923
DOI10.1584/jpestics.D15-056

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Summary:日本で主に使用されている水稲用農薬68種を対象に,高次の生態影響評価として,文献から得られた毒性データに基づいて種の感受性分布 (SSD) の解析を行った.SSDは,予測無影響濃度を推定したり,農薬による生態リスクを定量化したりするために有効である.SSDの5パーセンタイル値 (HC5) を計算して,これを予測無影響濃度とした.現行の水産動植物の被害防止に係る登録保留基準値とHC5値を比較したところ,68農薬のうち50農薬でその差は小さかった (10倍以内).ところが,特定の作用機作に分類される9種の殺虫剤と9種の除草剤では,登録保留基準値が10倍以上高かった.すなわち,特定の作用機作の農薬においては,現行の制度では生態影響を過小評価してしまうことが示唆された.これは,どの種に対して毒性が強いかという種間の感受性差が,作用機作によって明確に特徴的であることに起因する.
ISSN:1348-589X
1349-0923
DOI:10.1584/jpestics.D15-056