乳酸菌とビフィズス菌のサイエンスの発展

日本乳酸菌学会の設立 30 周年を迎えた昨今の乳酸菌およびビフィズス菌に関する研究の発展は目覚ましいものがある。とりわけ、ビフィズス菌の研究分野はこの十数年で著しく進展した分野の一つであると言っても過言ではない。すなわち、ビフィズス菌の母乳オリゴ糖に対する資化経路が明らかにされ、特にトランスポーターについての研究が進み、宿主の腸管におけるビフィズスフローラの形成との関わりが明らかになってきた。さらに、異なるビフィズス菌種間のクロスフィーディングの合理的なメカニズムがトランスポーターの知見を基にして明らかになってきている。また、貧栄養環境におけるビフィズス菌の生存戦略として具備されたと考えられる...

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Published in日本乳酸菌学会誌 Vol. 33; no. 2; pp. 67 - 76
Main Author 山本, 憲二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本乳酸菌学会 27.06.2022
Subjects
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ISSN1343-327X
2186-5833
DOI10.4109/jslab.33.67

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Summary:日本乳酸菌学会の設立 30 周年を迎えた昨今の乳酸菌およびビフィズス菌に関する研究の発展は目覚ましいものがある。とりわけ、ビフィズス菌の研究分野はこの十数年で著しく進展した分野の一つであると言っても過言ではない。すなわち、ビフィズス菌の母乳オリゴ糖に対する資化経路が明らかにされ、特にトランスポーターについての研究が進み、宿主の腸管におけるビフィズスフローラの形成との関わりが明らかになってきた。さらに、異なるビフィズス菌種間のクロスフィーディングの合理的なメカニズムがトランスポーターの知見を基にして明らかになってきている。また、貧栄養環境におけるビフィズス菌の生存戦略として具備されたと考えられる難消化性糖質に対する分解酵素や腸管への接着因子などが見出され、さらに抗老化作用やアルツハイマー病、パーキンソン病などの疾患との関わりが示唆されている。一方、乳酸菌についての研究も大きな進展が見られ、プロバイオティクスとしての乳酸菌が分泌する菌体外多糖の構造や機能の研究が著しく進展した。本総説ではこれらの新しい知見について概説する。
ISSN:1343-327X
2186-5833
DOI:10.4109/jslab.33.67