人工透析治療における血液回路チューブ変形と静脈圧の関係

血液透析は患者から血液を取り出し,老廃物等の除去を行い再び体内へ返す治療法である.しかしながら,留置針から十分な脱血量を得られない脱血不良が生じる場合があり,早期対処が必要となる.脱血不良の連続的監視には回路内に設けたピローが用いられるが,凝血塊が生じる可能性があり,設置は必須とされていない.そこで我々は血液と接触することなく検出可能な回路チューブの変形に着目し,新たな脱血不良監視手法を考案してきた.本研究では,脱血不良状態においてチューブ変形挙動に及ぼす影響と静脈圧の関係を明らかにすることを目的とする. 血液回路と透析器を接続して水道水を循環させ,ポンプ出口部におけるチューブ変形を測定した....

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Published inTransactions of Japanese Society for Medical and Biological Engineering Vol. Annual62; no. Abstract; p. 243_1
Main Authors 西手, 芳明, 山本, 衛, 川村, 勇樹, 桑原, 健太, 徳嶺, 朝子, 池田, 拓洋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本生体医工学会 2024
Japanese Society for Medical and Biological Engineering
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ISSN1347-443X
1881-4379
DOI10.11239/jsmbe.Annual62.243_1

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Summary:血液透析は患者から血液を取り出し,老廃物等の除去を行い再び体内へ返す治療法である.しかしながら,留置針から十分な脱血量を得られない脱血不良が生じる場合があり,早期対処が必要となる.脱血不良の連続的監視には回路内に設けたピローが用いられるが,凝血塊が生じる可能性があり,設置は必須とされていない.そこで我々は血液と接触することなく検出可能な回路チューブの変形に着目し,新たな脱血不良監視手法を考案してきた.本研究では,脱血不良状態においてチューブ変形挙動に及ぼす影響と静脈圧の関係を明らかにすることを目的とする. 血液回路と透析器を接続して水道水を循環させ,ポンプ出口部におけるチューブ変形を測定した.本研究では,鉗子で脱血チューブを閉塞することで脱血不良を引き起こした.ポンプの設定流量を300 mL/minとした時,ポンプ入口部における流量の実測値が200及び100 mL/minに低下した場合を,それぞれ脱血減少群及び脱血不良群として脱血不良状態を模擬した. 設定流量が300 mL/minの時,チューブの最大変形量は正常群でおよそ8.0 μm,脱血不良群でおよそ16.0 μmとなり,脱血不良が強くなるにつれて増加した一方,静脈圧は設定流量200mL/min以上の条件でのみ顕著に低下した.以上の結果より,チューブ変形は静脈圧と比較して100 mL/minの低い流量でも脱血不良を検出可能であることが示された.
ISSN:1347-443X
1881-4379
DOI:10.11239/jsmbe.Annual62.243_1