人工股関節ステムのセメントレス固定における打ち込み力の推定

セメントレスステムの固定において,強く打釘することで十分な固定力を得られるが,ときに術中骨折を惹起させるため,最適な打ち込み力を判断するのは難しい.微小骨折はX 線写真や肉眼で確認することが難しく,術中骨折の発生に関する報告も少ない.術中骨折の原因の一つとして,プレスフィットの際の固定性の獲得に関する明確な判断基準がなく,術者の経験や感覚に依存していることが挙げられる.術中骨折は,術後における荷重開始時期の遅延や日常生活動作獲得の遅延を来す恐れがあるため,その発生を防ぐ対策は極めて重要である. そこで本研究においては打釘の際に発生する打ち込み力を推定することを目的とし,セメントレス固定の手術を...

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Published inバイオメカニズム学会誌 Vol. 35; no. 1; pp. 52 - 57
Main Authors 高相, 晶士, 馬渕, 清資, 森谷, 光俊, 高平, 尚伸, 内田, 健太郎, 酒井, 利奈, 高橋, 亮子, 山本, 豪明, 糸満, 盛憲, 内山, 勝文, 福島, 健介
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published バイオメカニズム学会 2011
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ISSN0285-0885
DOI10.3951/sobim.35.52

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Summary:セメントレスステムの固定において,強く打釘することで十分な固定力を得られるが,ときに術中骨折を惹起させるため,最適な打ち込み力を判断するのは難しい.微小骨折はX 線写真や肉眼で確認することが難しく,術中骨折の発生に関する報告も少ない.術中骨折の原因の一つとして,プレスフィットの際の固定性の獲得に関する明確な判断基準がなく,術者の経験や感覚に依存していることが挙げられる.術中骨折は,術後における荷重開始時期の遅延や日常生活動作獲得の遅延を来す恐れがあるため,その発生を防ぐ対策は極めて重要である. そこで本研究においては打釘の際に発生する打ち込み力を推定することを目的とし,セメントレス固定の手術を模擬した実験を行い,実験より得られた打ち込み力を条件として有限要素解析を行った.解析により大腿骨内部に発生する応力値を推定し,推定された応力値の妥当性を検討するために,実験結果と解析結果から打ち込み量を読み取った. 測定によりステムの打釘に必要な打ち込み力は,9.25kN を越える大きなものであることが明らかになった.解析の結果,大腿骨に発生するミーゼス相当応力は,近位のステム直下において最大値を示し,打釘1 回目で31 MPa,打釘2 回目で68MPa となった.ステムは2 回目までの打釘で十分な変位に達するため,2 回目以降は微調整レベルにするべきである.
ISSN:0285-0885
DOI:10.3951/sobim.35.52