脳動脈瘤のエビデンスと実践知

Evidence-based medicineは, 科学的に実証済みでない医療行為の排除ではなく, 「エビデンス」 「専門家の経験・知識」 「患者の価値観」 の3要素を総合的に判断して, 個々の患者に対して最良の治療方針を決める行動指針を指し, アリストテレスが提唱した実践知に通じる概念である. エビデンスを正しく適用するためには, その論拠となる臨床研究の結果だけでなく, 研究デザイン・患者背景・評価法・時代的背景を正しく理解する必要がある. 脳動脈瘤のエビデンスとしては, 破裂脳動脈瘤に対するクリッピング術とコイル塞栓術の治療成績を比較したISATとBRAT, 日本人の未破裂脳動脈瘤の自然...

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Published in脳神経外科ジャーナル Vol. 32; no. 2; pp. 74 - 81
Main Author 片岡, 大治
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人日本脳神経外科コングレス 2023
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ISSN0917-950X
2187-3100
DOI10.7887/jcns.32.74

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Summary:Evidence-based medicineは, 科学的に実証済みでない医療行為の排除ではなく, 「エビデンス」 「専門家の経験・知識」 「患者の価値観」 の3要素を総合的に判断して, 個々の患者に対して最良の治療方針を決める行動指針を指し, アリストテレスが提唱した実践知に通じる概念である. エビデンスを正しく適用するためには, その論拠となる臨床研究の結果だけでなく, 研究デザイン・患者背景・評価法・時代的背景を正しく理解する必要がある. 脳動脈瘤のエビデンスとしては, 破裂脳動脈瘤に対するクリッピング術とコイル塞栓術の治療成績を比較したISATとBRAT, 日本人の未破裂脳動脈瘤の自然歴を示したUCAS Japanなどがある. 今後の新たなエビデンス創出のため, 動物モデルを用いた基礎研究, 画像データに基づくradiomics, AIを用いた研究などの成果が, その礎となることが期待される.
ISSN:0917-950X
2187-3100
DOI:10.7887/jcns.32.74