USAXS, SAXS, WAXS を用いたポリエチレン階層構造に関する研究

筆者らは一軸延伸下における直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の階層構造を解析するために,超小角 X 線散乱(USAXS)法,小角 X 線散乱(SAXS)法,広角 X 線散乱(WAXS)法を用いた.USAXS 法によって二種類の LLDPE のサブミクロンスケールの構造を解析した結果,未延伸状態ではどちらも次元 2.6 のマスフラクタルを持つラメラ相の分岐構造が等方的に広がっている様子が観測された.延伸下のサブミクロンスケールの構造は LLDPE の Melt Flow Index によって異なる変化の傾向を示した.Melt Flow Index の低い LLDPE ではラメラ相の分岐構造が...

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Published in高分子論文集 Vol. 66; no. 12; pp. 612 - 618
Main Authors 西辻, 祥太郎, 竹中, 幹人, 長谷川, 博一, 藤井, 澄明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 高分子学会 2009
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ISSN0386-2186
1881-5685
DOI10.1295/koron.66.612

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Summary:筆者らは一軸延伸下における直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の階層構造を解析するために,超小角 X 線散乱(USAXS)法,小角 X 線散乱(SAXS)法,広角 X 線散乱(WAXS)法を用いた.USAXS 法によって二種類の LLDPE のサブミクロンスケールの構造を解析した結果,未延伸状態ではどちらも次元 2.6 のマスフラクタルを持つラメラ相の分岐構造が等方的に広がっている様子が観測された.延伸下のサブミクロンスケールの構造は LLDPE の Melt Flow Index によって異なる変化の傾向を示した.Melt Flow Index の低い LLDPE ではラメラ相の分岐構造が延伸方向に対して平行方向に均一に伸長される様子が観測された.一方 Melt Flow Index の高い LLDPE ではラメラ相の分岐構造が延伸方向に対して平行方向に不均一に伸長される様子が観測された.これら LLDPE の種類による構造変形の傾向の違いは LLDPE の分子量の違いに起因するものと考えられる.また SAXS法によって二種類の LLDPE の結晶-非晶ラメラ構造を解析した結果,延伸下において Melt Flow Index の低い LLDPE はアフィン変形から外れた変形挙動を示したが,Melt Flow Index の高い LLDPE はアフィン変形を示すことがわかった.WAXS 法により結晶格子構造を解析した結果,どちらの LLDPE も非晶相の割合が半分以上を占めているということがわかり,非晶相の割合に大きな差は見られなかった.このことから結晶化度の違いは延伸下における構造変形の違いの起きる要因ではないと考えられる.
ISSN:0386-2186
1881-5685
DOI:10.1295/koron.66.612