リコリス葉切片において高温処理が促進する老化現象

近年,リコリスは観賞用植物として人気があるとともに,その特異な生活環が植物生理学的にも注目されている.本研究では,リコリスの葉が春の温度上昇に伴って特異的に枯れる現象に注目して,高温処理に対する葉の生化学的反応を葉の切片を用いて詳細に調べた.種々の予備実験から,35℃ 12 または 18 時間の温度処理がその後の 20℃ の静置中に顕著に切片のクロロフィルの分解を誘導することが分かった.2 種類のタンパク質分解酵素の阻害剤(10 mM PMSF と 4 mM TPCK)は有意にそのクロロフィルの分解と細胞活力の低下を抑制した.クロロフィルの分解に伴って,DNA の断片化,カスパーゼ-3-様タン...

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Published inJournal of the Japanese Society for Horticultural Science Vol. 77; no. 4; pp. 431 - 439
Main Authors カンラヤナラット, シリチャイ, 岡本, 繁久, 中村, 考志, ブンヤリットンチャイ, パニダ, マヌウオン, シカナット, 松尾, 友明
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 一般社団法人 園芸学会 2008
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ISSN1882-3351
1882-336X
DOI10.2503/jjshs1.77.431

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Summary:近年,リコリスは観賞用植物として人気があるとともに,その特異な生活環が植物生理学的にも注目されている.本研究では,リコリスの葉が春の温度上昇に伴って特異的に枯れる現象に注目して,高温処理に対する葉の生化学的反応を葉の切片を用いて詳細に調べた.種々の予備実験から,35℃ 12 または 18 時間の温度処理がその後の 20℃ の静置中に顕著に切片のクロロフィルの分解を誘導することが分かった.2 種類のタンパク質分解酵素の阻害剤(10 mM PMSF と 4 mM TPCK)は有意にそのクロロフィルの分解と細胞活力の低下を抑制した.クロロフィルの分解に伴って,DNA の断片化,カスパーゼ-3-様タンパク質分解活性の増加,細胞質への cytochrome c の遊離が観察された.以上のことから,高温処理によって促進される葉の老化はプログラム細胞死様反応と深く関係していることが示唆され,同様な反応が春の植物体中でも起こっていることが推測された.
ISSN:1882-3351
1882-336X
DOI:10.2503/jjshs1.77.431