動脈硬化研究の最近の進歩

動脈硬化病変は,血管の炎症性疾患と考えられている.現在までの動脈硬化研究は,血管を構成する血管内皮細胞や血管平滑筋細胞,炎症細胞の役割や,脂質代謝に着目したものが多くを占め,アスピリンやスタチン等,標準となった治療薬の作用機序を明らかにしてきた.最近では,炎症に対して新しいアプローチから研究が進められている.動脈硬化病変の血管外膜脂肪組織は,炎症性サイトカインを分泌し,隣接する血管に直接作用を及ぼすと考えられる.ヒトの心外膜脂肪組織容積は,冠動脈疾患と関連していると考えられる.動脈硬化病変では,炎症により血液凝固系が活性化されるが,血液凝固系は炎症をさらに増強させ,特に活性化凝固第X因子とその...

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Published in日本内科学会雑誌 Vol. 108; no. 8; pp. 1607 - 1616
Main Authors 平田, 陽一郎, 田中, 君枝, 佐田, 政隆, 福田, 大受
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本内科学会 10.08.2019
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ISSN0021-5384
1883-2083
DOI10.2169/naika.108.1607

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Summary:動脈硬化病変は,血管の炎症性疾患と考えられている.現在までの動脈硬化研究は,血管を構成する血管内皮細胞や血管平滑筋細胞,炎症細胞の役割や,脂質代謝に着目したものが多くを占め,アスピリンやスタチン等,標準となった治療薬の作用機序を明らかにしてきた.最近では,炎症に対して新しいアプローチから研究が進められている.動脈硬化病変の血管外膜脂肪組織は,炎症性サイトカインを分泌し,隣接する血管に直接作用を及ぼすと考えられる.ヒトの心外膜脂肪組織容積は,冠動脈疾患と関連していると考えられる.動脈硬化病変では,炎症により血液凝固系が活性化されるが,血液凝固系は炎症をさらに増強させ,特に活性化凝固第X因子とその受容体は,動脈硬化形成に影響を及ぼす可能性がある.自然免疫系を標的とした抗炎症治療に関しては,大規模臨床研究で心血管疾患抑制作用が示された.これらの新規動脈硬化治療に関する研究の,今後の発展が期待される.
ISSN:0021-5384
1883-2083
DOI:10.2169/naika.108.1607