健常者における口腔立体認知 口腔知覚判定研究用キットDF8 を用いた検討

【緒言】摂食嚥下において,口腔内感覚は食塊の形状認知や移送,円滑な咀嚼などにおいて重要な役割を果たすとされている.視覚的情報を遮断し,口腔内に入れたピースの形状を識別する口腔立体認知も口腔内感覚の一つであるが,先行研究に用いられたピースの材質や種類,方法などが一定ではなかった.国内では10 種の形状テストピース(以下,TP)で構成された口腔知覚判定研究用キットDF8(以下,DF8)が開発されていたが,このキットを用いて口腔立体認知を検討した報告はなかった.本研究では,DF8 を用いて口腔立体認知を測定し,TP ごとの正反応者数や年齢による差異,口腔立体認知と静的舌触覚閾値,口腔運動機能との関連...

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Published in日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 25; no. 1; pp. 11 - 21
Main Authors 新井, 慎, 立石, 雅子, 寺中, 智, 藤谷, 順子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 30.04.2021
日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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Abstract 【緒言】摂食嚥下において,口腔内感覚は食塊の形状認知や移送,円滑な咀嚼などにおいて重要な役割を果たすとされている.視覚的情報を遮断し,口腔内に入れたピースの形状を識別する口腔立体認知も口腔内感覚の一つであるが,先行研究に用いられたピースの材質や種類,方法などが一定ではなかった.国内では10 種の形状テストピース(以下,TP)で構成された口腔知覚判定研究用キットDF8(以下,DF8)が開発されていたが,このキットを用いて口腔立体認知を検討した報告はなかった.本研究では,DF8 を用いて口腔立体認知を測定し,TP ごとの正反応者数や年齢による差異,口腔立体認知と静的舌触覚閾値,口腔運動機能との関連を検討した.【方法】健常者84 名(19‐79 歳)を対象とした.DF8 による口腔立体認知,静的舌触覚閾値,口腔運動機能を測定した.【結果・考察】年齢については,青年群に比べ高年群でDF8 の正答率が低下するような明確な関係は認められなかった.本研究の高年群(69.6±16.5 歳)では,口腔立体認知は保持されるということが示された.また,TP は形状によって正反応者数が異なり,非対称性の形状は正反応者数が多かった.TP の形状を判定できない場合,形状の類似したTP に誤る傾向が認められた.口腔立体認知と口腔運動機能・構音機能との関連については,有意な相関関係が認められなかった.静的舌触覚閾値は年齢に伴って上昇したが,DF8 の正答率との間には明らかな関係を認めなかった.一方で,静的な知覚が良好であっても,DF8 の正反応数が少ない例も存在し,静的舌接触閾値だけでは口腔立体認知の状態を推定できないことが示唆された.今後,TP の組み合わせや対象の選定を考慮しながら静的舌接触閾値や口腔運動機能・構音機能と口腔立体認知との関連について,さらなる検討が必要であることが示唆された.
AbstractList 【緒言】摂食嚥下において,口腔内感覚は食塊の形状認知や移送,円滑な咀嚼などにおいて重要な役割を果たすとされている.視覚的情報を遮断し,口腔内に入れたピースの形状を識別する口腔立体認知も口腔内感覚の一つであるが,先行研究に用いられたピースの材質や種類,方法などが一定ではなかった.国内では10 種の形状テストピース(以下,TP)で構成された口腔知覚判定研究用キットDF8(以下,DF8)が開発されていたが,このキットを用いて口腔立体認知を検討した報告はなかった.本研究では,DF8 を用いて口腔立体認知を測定し,TP ごとの正反応者数や年齢による差異,口腔立体認知と静的舌触覚閾値,口腔運動機能との関連を検討した.【方法】健常者84 名(19‐79 歳)を対象とした.DF8 による口腔立体認知,静的舌触覚閾値,口腔運動機能を測定した.【結果・考察】年齢については,青年群に比べ高年群でDF8 の正答率が低下するような明確な関係は認められなかった.本研究の高年群(69.6±16.5 歳)では,口腔立体認知は保持されるということが示された.また,TP は形状によって正反応者数が異なり,非対称性の形状は正反応者数が多かった.TP の形状を判定できない場合,形状の類似したTP に誤る傾向が認められた.口腔立体認知と口腔運動機能・構音機能との関連については,有意な相関関係が認められなかった.静的舌触覚閾値は年齢に伴って上昇したが,DF8 の正答率との間には明らかな関係を認めなかった.一方で,静的な知覚が良好であっても,DF8 の正反応数が少ない例も存在し,静的舌接触閾値だけでは口腔立体認知の状態を推定できないことが示唆された.今後,TP の組み合わせや対象の選定を考慮しながら静的舌接触閾値や口腔運動機能・構音機能と口腔立体認知との関連について,さらなる検討が必要であることが示唆された.
「要旨」【緒言】摂食嚥下において, 口腔内感覚は食塊の形状認知や移送, 円滑な咀嚼などにおいて重要な役割を果たすとされている. 視覚的情報を遮断し, 口腔内に入れたピースの形状を識別する口腔立体認知も口腔内感覚の一つであるが, 先行研究に用いられたピースの材質や種類, 方法などが一定ではなかった. 国内では10種の形状テストピース(以下, TP)で構成された口腔知覚判定研究用キットDF8(以下, DF8)が開発されていたが, このキットを用いて口腔立体認知を検討した報告はなかった. 本研究では, DF8を用いて口腔立体認知を測定し, TPごとの正反応者数や年齢による差異, 口腔立体認知と静的舌触覚閾値, 口腔運動機能との関連を検討した. 【方法】健常者84名(19-79歳)を対象とした. DF8による口腔立体認知, 静的舌触覚閾値, 口腔運動機能を測定した. 【結果・考察】年齢については, 青年群に比べ高年群でDF8の正答率が低下するような明確な関係は認められなかった. 本研究の高年群(69.6±16.5歳)では, 口腔立体認知は保持されるということが示された. また, TPは形状によって正反応者数が異なり, 非対称性の形状は正反応者数が多かった. TPの形状を判定できない場合, 形状の類似したTPに誤る傾向が認められた. 口腔立体認知と口腔運動機能・構音機能との関連については, 有意な相関関係が認められなかった. 静的舌触覚閾値は年齢に伴って上昇したが, DF8の正答率との間には明らかな関係を認めなかった. 一方で, 静的な知覚が良好であっても, DF8の正反応数が少ない例も存在し, 静的舌接触閾値だけでは口腔立体認知の状態を推定できないことが示唆された. 今後, TPの組み合わせや対象の選定を考慮しながら静的舌接触閾値や口腔運動機能・構音機能と口腔立体認知との関連について, さらなる検討が必要であることが示唆された.
Author 立石, 雅子
新井, 慎
寺中, 智
藤谷, 順子
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  fullname: 新井, 慎
  organization: 目白大学保健医療学部言語聴覚学科
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  organization: 一般社団法人日本言語聴覚士協会・前目白大学保健医療学部
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Copyright 2021 一般社団法人日本摂食嚥下リハビリテーション学会
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DOI 10.32136/jsdr.25.1_11
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EISSN 2434-2254
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「要旨」【緒言】摂食嚥下において, 口腔内感覚は食塊の形状認知や移送, 円滑な咀嚼などにおいて重要な役割を果たすとされている. 視覚的情報を遮断し, 口腔内に入れたピースの形状を識別する口腔立体認知も口腔内感覚の一つであるが, 先行研究に用いられたピースの材質や種類, 方法などが一定ではなかった....
SourceID medicalonline
jstage
SourceType Publisher
StartPage 11
SubjectTerms 健常者
加齢
口腔立体認知
口腔運動機能
静的舌触覚閾値
Subtitle 口腔知覚判定研究用キットDF8 を用いた検討
Title 健常者における口腔立体認知
URI https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdr/25/1/25_11/_article/-char/ja
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Volume 25
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ispartofPNX 日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌, 2021/04/30, Vol.25(1), pp.11-21
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