石垣島・西表島住民および石垣島家畜の日本脳炎ウイルスに対する血清疫学的研究

1967年から1972年の間, 1969年を除いて毎年7月下旬から8月上旬に, 石垣島住民の日本脳炎ウイルスに対する抗体保有状況を調査した. 1967, 1968年の調査では, 20歳以上の年齢層は高い抗体保有率を示し, 加齢とともに陽性率は上昇し, 抗体価も高い価を示すものが目立った. ところが, 1967年から1972年までの調査で, 19歳以下の低年齢層では抗体を持つものはきわめて少数で, しかも, これらのうち生活歴の明らかなものはすべて石垣島以外で生れたものや数年間石垣島以外で生活した経験を持つものであった. 1970年7月下旬から8月上旬に西表島住民についても同様の調査を行ったが,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in感染症学雑誌 Vol. 58; no. 3; pp. 214 - 222
Main Authors 宮良, 長和, 上木, 良輔, 草場, 公宏, 小林, 譲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本感染症学会 1984
Online AccessGet full text
ISSN0387-5911
1884-569X
DOI10.11150/kansenshogakuzasshi1970.58.214

Cover

More Information
Summary:1967年から1972年の間, 1969年を除いて毎年7月下旬から8月上旬に, 石垣島住民の日本脳炎ウイルスに対する抗体保有状況を調査した. 1967, 1968年の調査では, 20歳以上の年齢層は高い抗体保有率を示し, 加齢とともに陽性率は上昇し, 抗体価も高い価を示すものが目立った. ところが, 1967年から1972年までの調査で, 19歳以下の低年齢層では抗体を持つものはきわめて少数で, しかも, これらのうち生活歴の明らかなものはすべて石垣島以外で生れたものや数年間石垣島以外で生活した経験を持つものであった. 1970年7月下旬から8月上旬に西表島住民についても同様の調査を行ったが, その成績は石垣島住民の日本脳炎ウイルスに対する抗体保有状況と同様のパターンを示した. 以上の成績から, 八重山群島では, 本調査開始の約20年前までに日本脳炎ウイルスの人体への感染はほぼ完全に遮断されていることが明らかになった. このような現象は1945年以後に行われたマラリア媒介蚊の撲滅作業と密接な関係を有するものと推定される. しかし, 家畜の調査成績からは, なおわずかに日本脳炎ウイルスの残存の可能性も推定された.
ISSN:0387-5911
1884-569X
DOI:10.11150/kansenshogakuzasshi1970.58.214