動脈硬化研究の新たな展開 心臓周囲脂肪組織と血管外膜微小血管
長年,日本人の死因第1位は悪性新生物であり,第2位は心疾患である.脳血管疾患は肺炎に続いて第4位であり,心疾患,脳血管疾患の原因となる動脈硬化症の重要性は依然として続いている(厚生労働省ホームページより).従来動脈硬化は,血管壁に脂質が沈着して生じると考えられてきた.しかし,最近の研究によると,動脈硬化病変には各種の活性化した炎症細胞の浸潤やさまざまなサイトカインの発現が認められ,血管の慢性炎症が根本的成因であると考えられている.古くから,糖尿病と心血管疾患発症の関連性が提唱されてきたが,最近では,糖尿病の背景となるインスリン抵抗性も,脂肪組織での慢性炎症との関連が報告されている.高血圧でも,...
Saved in:
Published in | 化学と生物 Vol. 54; no. 10; pp. 713 - 719 |
---|---|
Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
公益社団法人 日本農芸化学会
20.09.2016
|
Online Access | Get full text |
ISSN | 0453-073X 1883-6852 |
DOI | 10.1271/kagakutoseibutsu.54.713 |
Cover
Summary: | 長年,日本人の死因第1位は悪性新生物であり,第2位は心疾患である.脳血管疾患は肺炎に続いて第4位であり,心疾患,脳血管疾患の原因となる動脈硬化症の重要性は依然として続いている(厚生労働省ホームページより).従来動脈硬化は,血管壁に脂質が沈着して生じると考えられてきた.しかし,最近の研究によると,動脈硬化病変には各種の活性化した炎症細胞の浸潤やさまざまなサイトカインの発現が認められ,血管の慢性炎症が根本的成因であると考えられている.古くから,糖尿病と心血管疾患発症の関連性が提唱されてきたが,最近では,糖尿病の背景となるインスリン抵抗性も,脂肪組織での慢性炎症との関連が報告されている.高血圧でも,血液検査で,体内に炎症が生じているときに上昇するタンパク質(C-反応性タンパク質)値の上昇を認めるなど,炎症との関連が示唆されており,従来個別に考えられていたこれらの病態が,全身性の組織慢性炎症による一連の疾患として理解されるようになっている.糖尿病や高血圧,脂質異常症が動脈硬化症を進行させる経路は,血圧調節に関連するホルモンや,脂肪組織から分泌されるアディポサイトカインなど病態に関連する液性因子や,血液中の脂質が,全身の血流を介して血管病変に到達して作用すると考えられている.よって動脈硬化病変は,血管内皮細胞の機能障害に始まり,炎症が血管内腔側から外膜側に進行すると考えられ,動脈硬化研究は,血管内皮細胞,新生内膜,血管平滑筋細胞に着目したものが多数を占めていた.一方,最近では,動脈硬化病変局所での隣接する組織との関連が注目されている.われわれは,動脈硬化病変をもつ血管に隣接する血管周囲脂肪組織(perivascular adipose tissue; PVAT),および血管外膜微小血管(vasa vasorum; VV)に注目し,血管の外膜側から内膜側に向かう動脈硬化病変調節機構について検討している. |
---|---|
ISSN: | 0453-073X 1883-6852 |
DOI: | 10.1271/kagakutoseibutsu.54.713 |