釧路湿原国立公園の異なる植生タイプにおける ニホンジカの採食の影響評価

釧路湿原国立公園の異なる植生タイプに及ぼすニホンジカの採食の影響を評価し,採食の影響を簡便に評価できる指標種を提案するために,各植生タイプ(高層湿原,低層湿原,湿地林及び広葉樹林)で採食された全出現種の個体数(全体食痕数)と指標候補種の個体数に占める食痕ありの個体数の割合(食痕率)を調査した.食痕率を植生タイプ間で比較した結果,採食による影響は,高層湿原や低層湿原に比べて湿地林や広葉樹林で大きく,これらの植生タイプはニホンジカにとって好適な夏期の生息地であることが示唆された.釧路湿原で生態系の維持・回復を図るためには,これらの植生タイプで重点的な対策を実施していくことが重要だと考えられる.釧路...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in湿地研究 Vol. 8; pp. 17 - 32
Main Authors 長, 雄一, 日野, 貴文, 宇野, 裕之, 稲富, 佳洋, 島村, 崇志, 吉田, 剛司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本湿地学会 2018
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:釧路湿原国立公園の異なる植生タイプに及ぼすニホンジカの採食の影響を評価し,採食の影響を簡便に評価できる指標種を提案するために,各植生タイプ(高層湿原,低層湿原,湿地林及び広葉樹林)で採食された全出現種の個体数(全体食痕数)と指標候補種の個体数に占める食痕ありの個体数の割合(食痕率)を調査した.食痕率を植生タイプ間で比較した結果,採食による影響は,高層湿原や低層湿原に比べて湿地林や広葉樹林で大きく,これらの植生タイプはニホンジカにとって好適な夏期の生息地であることが示唆された.釧路湿原で生態系の維持・回復を図るためには,これらの植生タイプで重点的な対策を実施していくことが重要だと考えられる.釧路湿原における採食の影響を簡便に評価するための指標種としては,生育密度が高く,全体食痕数と食痕率との間に正の相関がみられたミゾソバ,カラマツソウ属及びツリフネソウが有効だと考えられる.
ISSN:2185-4238
2434-1762
DOI:10.24785/wetlandresearch.WR008004