腎移植患者における慢性抗体関連型拒絶反応の早期診断法の開発

慢性抗体関連型拒絶反応(CAAMR)の克服が、腎移植の長期成績向上に不可欠であるが、確立した治療法はない。それ故、我々はCAAMRを早期発見しうる診断法の開発を行っている。パラフィン切片より目的遺伝子の発現量を測定する手法を確立し、組織的に正常で3年後の移植腎の状態が確認されているプロトコール生検の遺伝子検索を行った。結果炎症に関連する数種類の遺伝子の発現よりCAAMRスコアを算出したところ、3年後にCAAMRに至る症例では至らない症例と比べ有意にCAAMRスコアが高かった。非侵襲的な尿を用いた早期診断法の確立を試みている。ヒト腎細胞を用いたRNAシーケンス解析より、炎症に関連する2つの候補遺...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in移植 Vol. 58; no. Supplement; p. s121_1
Main Authors 堀田, 記世彦, 岩原, 直也, 高田, 祐輔, 広瀬, 貴行, 辻, 隆裕, 村上, 正晃, 篠原, 信雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:慢性抗体関連型拒絶反応(CAAMR)の克服が、腎移植の長期成績向上に不可欠であるが、確立した治療法はない。それ故、我々はCAAMRを早期発見しうる診断法の開発を行っている。パラフィン切片より目的遺伝子の発現量を測定する手法を確立し、組織的に正常で3年後の移植腎の状態が確認されているプロトコール生検の遺伝子検索を行った。結果炎症に関連する数種類の遺伝子の発現よりCAAMRスコアを算出したところ、3年後にCAAMRに至る症例では至らない症例と比べ有意にCAAMRスコアが高かった。非侵襲的な尿を用いた早期診断法の確立を試みている。ヒト腎細胞を用いたRNAシーケンス解析より、炎症に関連する2つの候補遺伝子(ORM1、SYT17)を選定しCAAMR患者の検体で解析したところ、上記の遺伝子のCAAMRの腎組織での発現は亢進していた。更に非CAAMR患者と比較した結果、尿中ORM1,SYT17蛋白は有意に高値であり、2遺伝子がCAAMRのバイオマーカーになりうる可能性を見いだせた。また、血液を使用した診断法として、リンパ球混合反応(MLR)にてCAAMR患者の免疫反応を評価した。ドナーに対するCD4+、CD8+T細胞の反応がCAAMRで亢進していた。また、DSA陽性で組織学的にCAAMRに至っていない症例でも同様の所見が得られ、CAAMRが発症前に診断できる可能性が見いだせた。以上、腎組織、尿、血液を用いた当研究室で開発中のCAAMRの早期診断法について報告する。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s121_1