膵臓移植のパラダイムシフト 継続と転換

当時当然と考えられていたこと、標準であったものが、革新的に大きく変動することをパラダイムシフトと呼ぶ。本邦膵臓移植は2000年に第1例目の脳死下膵腎同時移植が行われてから、20余年の歳月を経て一定の成績を残すまでに至った。知識と技術の継承、意志の共有は進み、現在膵臓移植認定施設は21施設にまで増加した。着実に発展と広がりを見せている。各施設における経験と研鑽の蓄積は、All Japanの成績として今後も表れる。当科では、2001年に第1例目の膵臓移植を行い、現在91例に達した。首尾一貫した方針もある一方で、時代の変遷とともに変化を見せた部分もある。得られた結果は、当科膵グラフト5年生着率81....

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s200_1
Main Authors 野口, 浩司, 岡部, 安博, 加来, 啓三, 佐藤, 優, 久保, 進祐, 中村, 雅史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.58.Supplement_s200_1

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Summary:当時当然と考えられていたこと、標準であったものが、革新的に大きく変動することをパラダイムシフトと呼ぶ。本邦膵臓移植は2000年に第1例目の脳死下膵腎同時移植が行われてから、20余年の歳月を経て一定の成績を残すまでに至った。知識と技術の継承、意志の共有は進み、現在膵臓移植認定施設は21施設にまで増加した。着実に発展と広がりを見せている。各施設における経験と研鑽の蓄積は、All Japanの成績として今後も表れる。当科では、2001年に第1例目の膵臓移植を行い、現在91例に達した。首尾一貫した方針もある一方で、時代の変遷とともに変化を見せた部分もある。得られた結果は、当科膵グラフト5年生着率81.9%である。ただし、腎グラフト5年生着率の93.4%とは大きな乖離がある。この結果を膵臓移植の特殊性と解釈し、受容した時点で発展は終わりを迎える。大きな変化、新しい変化を望む時、それは「従来の方法では現状を打開できない」との思考が発生した時である。現在の当科HOW I DO ITを提示し、継続の中に見る価値を再考する。加え、転換の必要性を検証したい。ドナー適応の妥当性、bench surgery、血管吻合法、膵液ドレナージ法、予防可能な術後合併症など、更なる成績向上に向けての改良余地の模索、当科HOW TO CHANGEについても考察する。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s200_1