心臓移植allocation systemの設計更新にあたり考慮すべき経済的公平性

日本の心臓移植レシピエント選択基準は、医学的適応の見地から移植成立の実効性を担保し、移植機会の公平性を確保するための基準として運用されている。これまで過去6回の改定が行われてきたが患者が負担する経済的側面での検討はなされていない。日本では臓器提供病院にやや偏りが見られる傾向があるが、移植機会を公平に提供するため、また、国土としてエリア全体が狭いという特徴があるためか、全てのドナー心を全国規模で融通する運用がなされている。心臓の場合、虚血耐用時間という制限要素により、搬送には固定翼機が使用されることが多い。そのためドナー施設とレシピエント施設との距離によってドナー心搬送費用に大きな差が生じている...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s154_2
Main Authors 高橋, 悟朗, 鈴木, 佑輔, 片平, 晋太郎, 熊谷, 紀一郎, 細山, 勝寛, 秋場, 美紀, 齋木, 佳克, 安彦, 武, 工藤, 淳, 伊藤, 校輝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.58.Supplement_s154_2

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Summary:日本の心臓移植レシピエント選択基準は、医学的適応の見地から移植成立の実効性を担保し、移植機会の公平性を確保するための基準として運用されている。これまで過去6回の改定が行われてきたが患者が負担する経済的側面での検討はなされていない。日本では臓器提供病院にやや偏りが見られる傾向があるが、移植機会を公平に提供するため、また、国土としてエリア全体が狭いという特徴があるためか、全てのドナー心を全国規模で融通する運用がなされている。心臓の場合、虚血耐用時間という制限要素により、搬送には固定翼機が使用されることが多い。そのためドナー施設とレシピエント施設との距離によってドナー心搬送費用に大きな差が生じている現状がある。演者の施設における比較的最近に心移植手術が実施された18症例を振り返ってみると、陸路搬送可能な近隣のドナー施設からの搬送の場合(n=7)、患者への搬送費平均請求額は21万8千円であったが、固定翼機を用いた遠隔搬送の場合(n=11)、458万3千円であった。また、遠隔搬送群内においても最低355万6千円から最高628万6千円までの幅があり、約1.8倍の開きがあった。この移植を受ける患者間における支払い金額の差は、経済的公平性の観点から今後考慮しなければならない側面と思われる。ローカルドナーからの臓器移植の機会を増やすためには、当然のことながら臓器提供数全体の底上げが必要条件となる。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s154_2