拒絶反応制御を目的としたヒト乳歯歯髄幹細胞同時移植による膵島移植後の新しい免疫抑制法の開発
我々は膵島移植普及に向けてIBMIR(Instant Blood Mediated Inflammatory Reaction)をトリガーとした移植片に対する自然免疫系、獲得免疫系の免疫細胞応答亢進を制御する研究に従事している。これまでに、マウス門脈内膵島移植モデルにおいて、組織修復・治癒に寄与する間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cells : MSC)をサイトカイン刺激して同時移植することにより免疫応答が抑制されることで移植膵島成績が向上することを報告してきた。今回、ヒト免疫系において同様の現象が確認できるか、MSCのなかでも歯髄由来であるヒト乳歯歯髄幹細胞(Stem Cel...
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Published in | Japanese Journal of Transplantation Vol. 57; no. Supplement; p. s310_1 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本移植学会
2022
The Japan Society for Transplantation |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0578-7947 2188-0034 |
DOI | 10.11386/jst.57.Supplement_s310_1 |
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Summary: | 我々は膵島移植普及に向けてIBMIR(Instant Blood Mediated Inflammatory Reaction)をトリガーとした移植片に対する自然免疫系、獲得免疫系の免疫細胞応答亢進を制御する研究に従事している。これまでに、マウス門脈内膵島移植モデルにおいて、組織修復・治癒に寄与する間葉系幹細胞(Mesenchymal Stem Cells : MSC)をサイトカイン刺激して同時移植することにより免疫応答が抑制されることで移植膵島成績が向上することを報告してきた。今回、ヒト免疫系において同様の現象が確認できるか、MSCのなかでも歯髄由来であるヒト乳歯歯髄幹細胞(Stem Cells from Human Exfoliated Deciduous teeth : SHED)と骨髄由来MSCを用いて検討を行った。炎症性サイトカイン刺激によるMSCの表現型をフローサイトメトリーで検討したところ、SHEDではサイトカイン刺激に伴うMHC class2の発現増強を認めず、骨髄由来MSCよりも安定した細胞集団であることを確認した(n=6)。更に、ナイーブでは発現していないPDL1がMSC、SHEDともにサイトカイン刺激により有意に表出することが確認できた。次に、抑制性因子であるIDO、TGF-βの産生能をELISAで確認したところ、サイトカイン刺激下にSHEDにおいてのみ有意な産生効果を認めた(n=6)。PGE2の産生能についても、SHEDの方がより有意な増強効果を示した。更に、CD3/CD28磁気ビーズ刺激したヒトPBMCの活性化について、SHEDにおける強力な抑制効果が確認できた(P<0.01, n=6)。また、この効果は、PD1-PDL1経路を遮断することで有意に抑制解除されることも確認できた。機能解析として活性化PBMCによるiPS由来ヒトβ細胞に対する細胞傷害活性を確認したところ、サイトカイン刺激SHEDの同時培養によって明らかに抑制された(P<0.01, n=6)。以上より、SHEDの免疫抑制効果とともに液性因子、細胞接触による抑制メカニズムの可能性を確認した。膵島との同時移植により、安定且つ効率的な膵島移植を実現させることが期待される。 |
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ISSN: | 0578-7947 2188-0034 |
DOI: | 10.11386/jst.57.Supplement_s310_1 |